547 平凡な一日の始まり

通勤時間はたいてい本を読んでいるが、今朝はやめた。
傘を持っていたのと、なんだかぼんやりしたかったからだ。
吊革につかまって、毎日通っている窓外の景色を見ている。
停車したホームのラーメン屋に男の客が三人いる。朝からラーメンか?
他のメニューもあるようだが、三人とも湯気の立ったどんぶりを抱えている。そして三人とも妙に体格がいい。推定平均体重90kg。ラーメンだな。

次の駅には、傘の先でエレベーターのボタンを押そうとしている男がいた。狙いが定まらないようで何度もやり直している。一歩前に出て自分の指で押したほうが早いだろ。この男も体格がいい。100kg。

後続の電車が遅れているとかで、その次の駅で待機。私の乗っている車両は階段の近くに停まっていたので、ホームに上がってきた人はみな急いでこの車両に乗り込んでくる。
あんまり混んじゃうといやだなーと眺めていたら、またまた大きな男が階段をふぅふぅ登ってきた。推定110kg。こいつが乗ってきたら人一倍混みそうだが、やっぱり乗り込んできた。

やがて電車は動き出し、乗換駅に着いた。構内をぞろぞろ歩き、ホームに降りたらちょうど電車が入ってきたところだった。
大量に人が降りてくるので、人の流れに逆らわないようにいつもは行かない方に回り込んだら、目の前に本日最大の男がいた。身長約180cm、推定体重130kg。
なんだ今日は。BIGな男の日か?それともいつも気づかないだけで100kg級は世間にごろごろいるのか?

つられるように大男と同じ車両に乗ったが、後から後から大男が乗ってきて「これは大男専用車両か!」というようなことは起こらず、電車は大男のほうに傾くようなこともなく普通に走行し、その後とりたてて言うほどの大男にも遭遇せず、私は無事会社に着いた。
会社の人間はみな普通の体格でつまらない。
こうして。
今日も平凡で退屈な一日が始まった。

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