592 意外とラッキーマンである私の今日のラッキー

私は常々、自分は意外とラッキーマンであると思っている。

きょうは傘を盗まれました。

駐車場から仕事先のビルまで、20メートルほど傘をさして歩き、玄関先の傘立てに傘を置いて、用事を済ませて帰ってきたら傘がありませんでした。
そこそこ強く降っていたので、小走りで20メートルを走り、車に乗り込みました。

傘を盗んだ不届き者は今ごろ思っているでしょう。

「なんだよこの傘、漏れてくるじゃねぇか!うあっ!なんだよなんで突然閉じるんだよ!」

そうです。あなたが盗んだその傘には小さな穴がいくつか開いていて、しばらく差していると、棒を伝って雨がたれてくるのです。さらに、開いたつもりでいても、半円形の金具がゆるくて、突然閉じてしまう、そんな傘なんです。
どうです?他人のものを盗んだ代償を払う気分は。
いい気味です。あなたのような泥棒はせいぜいイライラすればいいのです。
え?
そんなこと言ってるお前だって傘がなくて困ってるだろざまぁみろ?
そうですね。
確かに20メートルばかり濡れながら走りましたよ。
でも車には誰か別の人のビニール傘があったのでその後の行動にはまったく支障ありませんでしたよ。
何より私がラッキーだと思ったのは、これでその傘を私の手で捨てなくてよくなったということです。

雨の日に使っていて、漏れた雨水で見る見る手が濡れてゆき、イライラが頂点に達した瞬間に突然傘が閉じたりした時は、まっぷたつに叩き折って捨ててやろうかと思うほど腹が立ちましたが、そのあと濡れながら歩くことを思うとそれもできず、我慢の日々でした。
この雨が上がったらこの傘を捨ててやる。何度そう思ったことでしょう。
でも、雨が上がれば傘の不自由さなどケロっと忘れてしまい、また雨が降るまでその傘は家に保管されていたのです。
私が傘の捨て方をよく知らないから先延ばしにしていたということもあります。
でももうその悩みからも解放されました。
今から新しい傘を買いに行きます。これで傘をさしているのに手がびっしょりになったり、突然傘が閉じて、びっくりするやら恥ずかしいやらな目にあわなくてすみます。

ありがとう、なんて言いません。あなたは泥棒です。せいぜい恥ずかしいタイミングで傘が閉じるよう祈ってます。
でも。
ひとつだけお願いがあります。

その傘、ちゃんと正しい方法で捨ててくださいね。

(きょうは湊かなえ作『告白』の教師風にキメた!)

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