大きな本を手にする幸せ 『奇界遺産2』読了だら

 

基本写真集なので「読了」はしっくりこないかな。でも文字もあるし。「見終わった」もなんか違う。
この本に関しては、写真を見て「なんだこりゃ」、説明文を読んでからもう一度写真を見て「なんだそりゃこりゃ」。
ひとつのテーマで何度か味わいが変わる。

例えば、ラスプーチンのチンチン(ラスプーチンチンチン)、「勃起時には33センチを越えた」という記述。思わず自分の股間を意識しつつ「マジかよ」とつぶやく。そして「誰がいつ測ったんだよ」と思い至る。そして再びラスプーチンの巨根写真を眺める。味わい深い。

巨根のような肉体的なものもインパクトあるが、私は誰か個人が想い溢れて一方向に走り続けてしまった結果により心を動かされる。
本書ではフランスの「レイモンド・モラレスの彫刻庭園」。壁に囲われた森に放置された、鉄工職人モラレスが作り続けた700体の鉄の像たち。もうこれ絶対おかしい。形から何からいちいちおかしい。
彫刻庭園を引き継いだモラレスの甥は彼のことを「鉄の心を持った獣だった」と語る。機械獣か。
誰にも理解されないまま20年、作り続けた700体。
私が理解できるわけはないが、理解されなくても突き動かされて作り続けた膨大なクソ熱いエネルギーの流れは感じる。
理解されない膨大なエネルギーを持ってしまった者のやむにやまれない衝動については少しはわかる。
お金になったり、誰かに褒められたりしなくてもやりたいことをやればいいのだ。むしろ他人に理解されなくてもやらずにいられないことを持てたことこそ幸せであると心底思う。
みんな他人の思惑などいちいち斟酌せず、生きたいように生きればいいのだ。

今回イラストは諸星大二郎。前回の漫☆画太郎もぶっ飛んでてよかったけど、今回はもう少し整った味わい深さ。ついつい時間をかけて見入ってしまった。
というわけで前作に続いて大満足の『奇界遺産2』。人生に迷った時は(そんなことあんまりないけど)手に取る本になるでしょう。
人生に決まった道なんかないんだから迷うこともないんだと教えてくれるでしょう。

 

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