当然っちゃー当然なんですが、自覚的にホラーやオカルトが好きな人に向けて書かれているように思えました。


『ずうのめ人形 』(角川ホラー文庫) 澤村伊智  (著)

オカルト、ホラーへの対し方がさまざまな人たちが出てきます。

つらい現実からホラーに逃避する少女、オカルトを仕事にしているライターや編集者、ホラーに関する固定した知識ばかり振り回すじじい、ホラーが流行ってるから乗っかる普通の人々、そして霊能力者。

霊能力者以外は全部自分の中に少しずつはあるよなぁ、と思いながら読んでいました。

で、それらが読者に感情移入させるためのテクニックで、「うまいなぁ」と、たかをくくって読んでいたら終盤でとんでもないことになりました。私の心が。

やはり娯楽は感情移入してなんぼですな。この本の場合は作者に見事にぶん回されましたがそれこそ読書の本望です。

現実の“現在”と、小説の原稿として読まれていく“過去”の物語が交互に描かれて、現実のモデルがありながらもフィクションとして扱われていた過去の物語が現在にがっちり食い込んでくる、という展開なのですが、その瞬間は本当にゾッとしました。

でもその後もっとゾッとすることが起きます。っていうか明らかになります。なってゆきます。なってゆくんだったら!

“現在”は、小説が書かれた現在だと思いますが、“過去”は、あの、貞子で有名な『リング』が映画化された前後、に設定されています。

これも最初は、ある世代のホラーファンの気持ちを掴むための設定かと思いましたが、現実にあったブームを土台に置くことで、読んでる方は自分の“現在”と物語上の“現在”が地続きになってしまうという恐ろしい快感を得られるようになっています。

『リング』の他にもホラー、怪奇作品の書名や映画タイトルが出てきて、好きな人には楽しめるようになっています。

文句なく“怖い”物語なのですが、はじめに書いた “オカルト、ホラーへの対し方がさまざまな人たち” が、クライマックスに向かってそれぞれ役割を演じていく中で、ただひとり、ホラーに関する知識を振り回すじじい(リアルタイムであの映画を見てないのはダメだ、とかあのシリーズはあそこまでとか偉そうに決めつけるようなやつ)だけは役割を得られず、主人公から「お前はいいから」みたいな扱いを受けるところはちょっとおかしかったです。

多分作者はこういう輩が嫌いなんでしょう。ルックスもあまりいい印象ではない描写でした。

そんなわけで怖くて面白くて、ユーモアもあった『ずうのめ人形』でした。

最後に前回 “俺的ぼぎわん” を描かせてもらいましたので、今回は “俺的ずうのめ人形”を描かせていただきます。見た人は、四日後、気をつけてね。ひぃ〜っひっひ。

*『ぼぎわんが、来る』感想こちら→いろんな意味で怖いホラー小説『ぼぎわんが、来る』を読んだら

 

 

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