©oto-ra 2000-2018

キシワタリ天涯地 22

 







「あれ?って…」

 



「そうだ、やっぱり…」

「え?」



 



「の、登っちゃうの?

ねぇ!

そこ、登ろうとしてる?」


「ん?」

「やっぱりやっぱり」

 「くぼやん、久しぶり」

「え?」
 

 


「え?」


22

「おまえ、…ま、」

「…みたま?」

 

「三珠…なんでここにいるんだよ。こんな…朝から」

「くぼやんもね。行かなきゃ、俺、あそこへ。あれ、くぼやんだったんだ」

「え?何?三珠なに言ってんだ」
 

「なんか、私もわかるようなわかんないようなかな。あ、私もう三珠まりんじゃないから」

「え?なにそれ?」

「今は佐藤まりんちゃん。名前が変わったの」

「え?え?…結婚したのか?」

「ふっ。
ふふふ。くぼやんてさぁ。まぁそういうやつだったよね。
結婚しなくても名前が変わることがあるじゃない、子供は」

「え?そうなのか?」

「ふふふ。くぼやん面白いね。親が離婚したのよ」

「あ、ああ。…
そうか」

「でもくぼやん久しぶりだね。何年ぶりかなぁ?」

 

「え?何年だ?」

「わたしが6年生の夏休みにいなくなっちゃったから、…いち、にい、…
4年か!」

「よねん。」

「うん、4年ぶりだよくぼやん」

4年。あれから…、4年か」

 「くぼやん、」

「ん?」

「まりんの家って、…やっぱでかいよね」

「うん…でかい」 

 「くぼやん、ああいうのなんていうか知ってる?」

「え?ああいうのって?」

「ああいう、仕打ち」

「仕打ち?」

「ああいうの “もんぜんばらい” っていうんだよ」

「ちょっと違うんじゃない?」
 「そうか…。逆ドタキャンかなぁ」

「なにそれ。でもインフルエンザじゃしょうがないよ」

「でも、…
まりんのお母さんって、きれいだな、と思ってたけど近くで見るとやっぱおばさんだよね」

「おばさんだもんな」

「…、ねぇ、くぼやん」

「ん?」
  「これ、もらった時にさぁ…」

「うん…」

「…、まりんの声、聴こえたよね」

「……」

「気がつかなかった?」

「…いや、…。…聴こえた」
「なんか、叫んでたっていうか…。なんて聞こえた?」

「うん、…こないで、って」
 「…だよね。…こないで…」
 

おばさん、聞こえないふりしてたよね、あれ」

「…うん」

 
「腹へったなぁ。俺、お母さんにお昼いらないって言ってきちゃったんだよなぁ」

「俺も」
 
「これ、お菓子かなんかかなぁ」

「…どうかなぁ」

 

 
「まりん、みんな帰ったわよ。
…ねぇ、まりん?


 
 
「…、ねぇ、どうしたの?どうしてここ開かないの?」

 

「ねぇ、まりん?」




ボドリ…


「まりん?まりん?」



「くぼやん、六年生の夏休み。私の誕生日にさぁ、来てくれたでしょ?」

「ああ。…行ったな」

「私が、あれで、パーティーできなかったけど。
プレゼントだけくれたでしょ?」

「…そうだっけ?」

「くれたよ。色鉛筆」

 


「そうだっけ。
いろえんぴつ…」

「そう。色鉛筆」

「そうか。いろえんぴつ…」

 

「私あの後、…入院して。くぼやんにもらった色鉛筆でたくさん絵を描いたんだよ」

「病院で?絵を?」

「なんか…そういう病院」

「そうか…」

 


「退院して、中学に入ったんだけど。なんか。なんかダメだったなぁ」


「ダメ?」

 

 






「くぼやん…俺、転校するかもしれないんだ」

「え?まじ?」

「うん。お父さんが、引っ越したいみたいなんだ」

「転勤かなんか?」

「じゃなくて。この町が。なんていうか、おかしい、って」

「あ、ああ」

「なんか、事件とか多いでしょ?絶対おかしいって。
こないだの自分の子ども監禁してたのとか、通り魔とかこの町に集中しすぎだって。
事件にならなくてもいろいろあって…うちのアパートでもケンカとか多いんだよ。
なんかおかしいって。このままじゃうちもみんなおかしくなっちゃうって」

「うちもそんな話ししてた」

「あと幽霊とか見たって人も多いんだって」

「ホント?」

「うん、それとかUMAも出るって」

「ユーマ?」

「夕方とか変な生き物が、あ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「地震だ…最近また多いよね。

こういうの全部余震なんだってね」

「ふぅん」

「御子よ
とらえし百八つのたましいをときはなち
しもべいっさい引き連れてこの世を去れ」

 
「たれめいずるか
このむじんの世界をすべるおうたるものに
たれめいずるにあたうか けがれしものよ」


「御子よ!
ここはお前の世ではない!」 

「やがて因果滅し
ひとのよに
災厄の
雨がふる(ふたたび)
みこは
すべて
ゆるされる
みこは
いんがをこえる」
 
 

つづく

キシワタリ天涯地 22 2018.05.05

Horizon zone KISHIWATARI 22 2018.05.05
©Masakagemaru Terada/oto-ra.com

  • Facebook
  • Hatena
  • twitter
  • Google+
PAGETOP
Copyright © オトーラの書 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.