解説付再録:エレキの力 2002.6.16

昔、怪獣映画で『キングコング対ゴジラ』というのがあった。
コングは初め、ゴジラに負けるのだが、そのあと日本をウロウロしているうちに電線に引っ掛かってビリビリしびれたかと思ったら、なぜか帯電体質というものになり、パワーアップして、ゴジラとの再戦で優勢勝ちをおさめた。
最近では『仮面ライダークウガ』というのがあった。
怪人の毒で心臓が停止した主人公に、医者が電気ショックを与えるのだが、その影響でクウガは新しい力を身に付け、前より強くなってよみがえったのだ。

このように、電気というものは生物に不思議な影響を与えるとされてきた。 もっとずっと古い話では平賀源内が「えれきてる」というのをなんかして、なんか不思議だったらしいという話も伝えられている。
とにかく電気である。 エレキである。 エレキに注目である。

何ヶ月か前から右肩に痛みをおぼえるようになった私は、とても不自由な生活を送ってきた。
四十肩だろうか?いや、まだ三十九歳だ。では「ほぼ四十肩」あるいは「おおむね四十肩」いや、「四十肩見習い」だろうか。
いったい何の話になっちゃったんだろうかと心配でしょうが、あとでちゃんとつながるから安心してね。
とにかく、息子とドッジボールをしていてもヘニョヘニョした球しか投げられない。 左肩の後あたりがかゆくてもかけなくてイライラする。
そのうち右腕が途中までしか上がらなくなってしまった。
痛くて
電車の吊り革にもつかまっていられないくらいだ。 これはいけない。サラリーマンとして致命的な欠陥である。
病院行きか? きらいだな。病院。 やだな、病院。 その時私は気づいた(病院に行きたくない一心で)。
まだチャンスはある!
エレキだ!まだエレキがある! キングコングと仮面ライダーと平賀源内だ! エレキングって怪獣もいたぞ!

私は薬局へ走った。 肩凝り腰痛にはやっぱりエレキである。そう書いてある。
何種類か並んでいるうち、一番有名でお手頃のやつを購入した。 帰宅し、入浴後患部に貼り付ける。
「凝っているところに貼って下さい」と、説明がある。そりゃそうだろ。
こういうものを使うのは初めてだったので、その後の夕食の時にも効果が気になってしょうがない。 夕食を食べながらも肩を回してみたりした。 ちなみに夕食はチゲ鍋だった。
ビール(発泡酒だけど)を飲みながら鍋をつつく一家だんらんの間にも、五分に一回くらい、仮面ライダーの変身ポーズみたいに腕を回してみる。 なんだか。
そこはかとなく。
痛みが和らいで。
可動範囲が広くなっているような気がする。
さっきまでの自分の肩と違うような気がする。
すごいぞエレキ! エレキの力に感動しながら、酔っ払いながら、その日は床に就いた。
息子と思いきりドッジボールをしている夢を見た。 二人とも満面の笑顔だった。 笑顔がスローモーションになったりしていた。

翌朝。 肩を回そうとした。
回らなかった。
どうやら。 酔って痛みが麻痺していただけだったようだ。
今日から人並みの生活が送れると思っていた私は落胆した。
しかし、私はあきらめない。なにしろエレキなのだ。一晩で結論を出すのは早すぎると言うものだ。 勝負はこれからなのだ。
注:エレキの力の効果には個人差があります。薬局薬店で御相談下さい。
しかし、肩凝りに一番効果的なのは「腕を大きく振って歩く」ことだと最近発見した私であった。

2015年の解説

肩こりに悩んでたみたいです、2002年の私。
39歳かぁ、そうかぁ、そんなお年頃もあったんだぁ。
最近周囲の同年代に肩を痛がる者が増えていますが、私が先取りしてました。なんと13年も。 13年も先取りした理由ははっきりしてて、ネットのお絵描き掲示板でお絵描きしすぎたんですね。これでもかってくらい細かい絵を描いてましたね、当時。そりゃ肩も壊すわ、みたいな。 その後肩痛はいつの間にか解消したのでした。なんか知らないうちに。
そして今ではなんだか体じゅう凝ってるように硬くて歳はとりたくねーなー、と日々思っているのでした。

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