宮部みゆき『ソロモンの偽証』を読んだら

お約束だった「日本三大みゆき」の宮部みゆき著『ソロモンの偽証』の感想です。文庫版全6巻読了いたしました。
濃い。
濃いよ「日本三大みゆき」のひとり宮部みゆきさん。
文庫(平均500ページくらい)で6巻。
長い。長いけど6巻ずっと濃度がずっと変わらない。これはすごい。
なんかこう、「つかみ」で全力使い果たしちゃったようなコンテンツを見かけることも多くなった昨今。「どんでん返し」だけに命をかけて大騒ぎするようなコンテンチュにうんざりさせられることもざらな昨今ですが。そんな手管とは無縁の「作品」を読ませていただきました。
もうひとつ言うとタイトルだけで内容を全部書いてしまうようなコンテンツェが溢れかえる昨今、謎めいたタイトルです『ソロモンの偽証』。
「ソロモン」というのは、旧約聖書に登場する知恵の王ソロモンのことで、神から「善悪を見分ける知恵」を与えらて、「公正な裁き」を下す王だそうです。
それがなぜ「偽証」とセットにされてるの?
ってとこが作品全体を包摂するテーマになってます。全部読むとこのタイトルの意味がわかるようになってます。

昨今昨今言ってますが2002年から2011年までの雑誌連載(『小説新潮』)、全3巻でも刊行が2012年なので昨今作品と比較するのは適当ではないかもしれませんね。
でも雑誌連載から刊行まで10年。このタイトルを全うしたのはすごい胆力ですね。さすが「日本三大みゆき」のひとりです。

ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻

物語は1990年のクリスマス・イヴから始まります。雑誌連載の10年以上前の時代設定ですね。
いわゆる「バブル」が弾ける直前くらいでしょうか、東京都内の中学校の校内でその学校の男子生徒柏木卓也の転落死と見られる遺体が発見されます。
柏木卓也はある出来事の後ひと月ほど不登校を続けていた生徒で、それ以前も校内で孤立していた「ちょっと難しい生徒」だったこともあり、「自殺」として片付けられます。
が、「彼の死は殺人で、それを目撃した」という告発状が中学校その他に送られてきます。
というところから波紋が波紋を呼び、想定できないことが立て続けに起こります。

そりゃあらゆる「想定できないこと」がそりゃそりゃ「想定できる限り」起こります。
生徒個人のコンプレックスやら各家庭の問題やらマスコミが起こす問題やらやら。起こり得るあらゆる問題が次々に、あるいは同時に起き、語られていきます。
波紋が波紋が呼ぶ展開です。
あちこちで広がりまくった波紋が、告発状で殺人犯人とされた不良少年を被告とした「学校内裁判」に向けて収斂してゆきます。
一人の生徒の死を、大人たちが既成の価値観で「こんなとこだろ」と収めてしまったことに対する違和感が限界を超えてしまった女子生徒と同調者が様々な障害を克服して「学校裁判」開催に向けて行動します。ただそれで事件やその他の出来事が収斂に向かったかと思うとその過程でまた波紋や障害が発生します。
どうなっちゃうんだこれ?
と思いますが、その障害を克服する過程で生徒たちが自分の個性や能力を発揮したり、苦手なことも(思わず)乗り越えたりの展開が続き、もう先へ先へ読まずにいられません。

途中で(ひょっとしたらこれってあれがあれなんじゃない?)と思うようになり、そしてそれはその通りだったんですが、最後にそれを超える真相が明かされます。
それは読者を驚かせるだけのどんでん返しや、とってつけたような刺激だけ強い衝撃の真実ではなく、ここまで感情移入して読んでこその切ない真実でした。
生徒たちはその切ない真実に向き合い、受け入れ、包み込みます。
自分が何かをすれば何かが起きる。
そう思いました。

*今回の「活字の子」サムネイル画像は生成AI(bing)で作ったものです。

blinksaba
blinksaba

タイトルとURLをコピーしました