日々棒組み638 僕が日々晴れ晴れと生きているその理由

みなさん覚えていらっしゃいますでしょうか?

あちこちに書いたようなそうでもなかったようなあの事件。
数年前、私の、小さなほんのささいなちょっとした同情すべきミスで、仕事で使う部材を重複して発注してしまった事件。
いろいろ事情があってその仕事は来なくなってしまい、あの呪われた部材は私が隠匿し、その存在すら忘れかけていたのでございます。

ところが今年になって。
社内の大掛かりな模様替えが決行され、部材を隠していた私の陣地も立ち退きを迫られたのでございます。

このままではあの部材が見つかってしまう。せっかくみんな忘れて幸せな日々を過ごしていたのに。包帯のような嘘に包まれてあんなに平和だったのに。
迫る立ち退き期限。どうしよう。

そんなある日。
社内をブラブラしていると、あるものが目にとまったのです。
それは、大きな大きな三つの金属製の大きなカゴ(どんだけ大きいんだ)。
中には機械の部品のような金属製の何かやら、元が何だったかまったくわからない木製の何かやら、ひしゃげた事務机やら、ひしゃげた事務椅子やら、シャッターを下ろす時に使うあの棒がひしゃげたのやらが雑多に放り込まれていたのです。
まるで、「分別」なんて日本語など存在しないかのように。

カゴには、段ボールの切れ端に手書きの下手くそな字で「産廃」と書かれた札が貼り付けられていました。書けないマジックで何回もキュッキュキュッキュして書いたようなささくれた文字「産廃」。産業廃棄物。産業から廃棄された物たち。なにやら社会派な響き「さんぱい」。

それとなく現場の責任者に訊くと、何でも捨てていいらしい。
大掛かりな模様替えゆえにこんなものが必要になったのだ。
なんでも捨てていいカゴ。
なんでも捨てていいカゴ。
なんでもすてていいカ〜ゴ〜。

ありがとうドラえもん。
私は、例の部材を入れた段ボール箱をかかえ、魔法のカゴの周辺に邪魔な社員やパートのババァがいない時間帯を見はからって接近、箱を頭上高く持ち上げ、

「くたばれこのドグサレ外道〜っ!!」

叫ぶや否やドクサレ段ボールを叩き込んだ。

なんでも捨てていいカゴだ。
私はその時、段ボール箱とともに、都会の片隅ですり減ってひしゃげた私の心もそのカゴに叩き込んだのかもしれない。

こうして。
余計なものもひしゃげた心も捨てて、日々晴れやかに生きてる僕。
若者よ。過去の失敗もやがては晴れ晴れと生きる糧となる。そんなおっさんになればそれはそれでいいじゃん。てそういう話さ。

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