568 腐れゆく娘にボカロの歌を

下地はあったのだろう。
父親が父親だから。
娘アヤ中学一年生が漫画やアニメ的なものに夢中です。

本当にたまにだが、いっしょにカラオケに行くことがある。
子どもが歌う歌を親が知らないのはまぁありがちだとしても、娘が歌う歌のまーあテンポが速いこと速いこと。
びっくりしちゃう。これでもかってくらい言葉が詰め込まれてる。画面が歌詞の文字でいっぱいだ。
「勝手にシンドバッド」を初めて聴いたときはテンポの速い歌だなぁと思ったけど、もうぜんぜん。「勝手にシンドバッド」が止まって見える。
で、それを歌ってるんだね。アヤさん。
ボカロって人の歌だって。
お父さんも対抗して自分が歌える最速の歌、佐野元春の「アンジェリーナ」を歌い始めたら娘と妻がトイレに行っちゃった。
お父さんはひとりぼっちで歌い続けたよ。さみしげなエンジェルは今夜も愛を探してるよ。

夏休みに入ると娘は、お友達数人で秋葉原に行きたいと言い出した。
小学校からの友だちにやはり親が親ならみたいな子がいて、子どもだけで何度か行っているらしい。
なんていうんだろ。
ついに来てしまった召集令状、みたいな。

娘をなにかに取られてしまうようなそんな気分。
そういえば少し前に、
「秋葉原にはおっきな本屋があるんだってぇ」
と、目をキラキラさせて言ってたっけ。

いちおう親同士了解とって行かせましょうということで妻が他の子の母親と連絡とったりしてる。
父親の許可も必要らしい。
父として許可を与えるが、注意も与える。

秋葉原へ旅立つ娘へ父からの注意事項
1.友だちとはぐれないようにぴったりくっついて行動。
2.こまめに水分補給。
3.様子のおかしなものに気をつける。

当日は仕事をしていても気が気じゃない。
友だちとはぐれて泣いてないだろうか?
喉が渇いて倒れていないだろうか?
大きな地震でも起こってどうしていいのかわからなくなったりしないだろうか?

心配で心配で死んだマツコばあちゃんにアヤの無事を祈った。

夕方。
妻から娘の無事帰還を知らせるメッセージが届いた。
ありがとう神様、ありがとうマツコばあちゃん。

娘たちは、秋葉原の本屋とか、なんとかメイトとかいう店をまわり、たくさんのアニメグッズを購入してきたようだ。
有名なスイーツの店に寄ろうかという案もあったが、そんなところでお金を使うよりはアニメグッズにお金を使おうじゃないかと、昼はマクドナルドで済ませたとドヤ顔で語る娘。
さらに、秋葉原から帰ってさらにその足で越谷レイクタウンのなんとかメイトにも行ったとか。はしごだ。クラスメイトとハシゴメイトだ。

「この世にパラダイスがあったよ、お父さん」
とでも言うように瞳をキラキラさせて秋葉原行きの話をするアヤ。

娘は秋葉原から無事帰ってきた。

が。

「あっち」からはもう還ってこないのだろう。
にどとふたたび。

父はちょっぴり寂しい。

コメント

  1. ハエゲロ より:

    大丈夫。
    心は二次元の世界に囚われていても、自立した精神を保ち、周囲のふにゃけた若い男や情けないオジサンを叱咤して立派な仕事をしている女子たちを俺は沢山たくさん見てるんだ。
    大抵のものはちょっと腐ったくらいが最高なんだ。

    • オトー より:

      ハエゲロくん、力強いおことば、ありがとう。
      夏休みの宿題も着々と進んでいるようだし、情けない父親を𠮟咤したりしてるのできっと大丈夫でしょう。

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