あまりにおぞましいカトリック司祭による子どもに対する性的虐待行為とそれを隠蔽するにとどまらず雇い続け昇進させすらした司教と枢機卿の物語『スポットライト 世紀のスクープ カトリック教会の大罪』ボストングローブ紙《スポットライト》チーム[編]を読んだよ

「複数の」というにはあまりに多数のカトリック司祭が未成年の子供に性的虐待を繰り返し、それを教会ぐるみで隠蔽、虐待の犯人を解雇したり子どもたちから遠ざけるどころか繰り返し別の教区へ(前歴を知らせないまま!)送り込み、さらに犯罪を重ねさせたというどうにもおぞましく汚ならしい大事件をボストングローブ紙の特集記事チームが暴き、その報道が犯罪者を罰することにつながっていったという実話をまとめたもの。
映画化もされたが、私は未見。

カトリック司祭の犯罪ということで、信仰に馴染みがないとわかりにくいのかなと思ったがそんなことはなかった。
この恥ずべき司祭たちが性的虐待の標的にしたのは貧しい家庭の子どもたち。多くは母子家庭で、子どもに手もお金もかけられない家庭の子。しかも兄弟で被害者になっているケースも少なくない。弱い者が食われる。なんて合理的、そしてどこにでもある話。信仰関係ない。

私は信仰を持たないが子供がいる。だからこの話がどんなにおぞましいかは肌でわかる。身近にいて、生活や精神的に頼っている者にレイプされ、すべてを支配されていくというのは近親相姦と同質だ。あまりにおぞましい。
虐待された当時には誰にも言えなかった被害者の言葉。

「彼はすべてを奪った。無邪気さ、宗教心、そして純潔──すべてを奪った」

被害者にとっては深く信仰に関わる出来事。保護者にとっても。
司祭たちがないがしろにしてその変態性欲で汚して無価値にしてしまった信仰。でも被害者はその信仰のために苦しみ、誰にも打ち明けることができなかったことを思うとあまりに気の毒でその不公平さに腹がたつ。
変態司祭が自分の行為を口止めしようと子どもに言う言葉などあまりに汚ならしく腐っていて吐きそうになる。

変態司祭は変態性欲を満たし続け、その上長である司教、枢機卿は自分の保身と、教会組織の護持のため見て見ぬふりをし、視界に入れば目を背け、子どもの泣き声に耳をふさぎ、せっせと言い訳を生産し、寄付金を集め続ける。
ボストングローブ紙の特集班は被害者の声を聞き、加害者に迫り、事件を報道し、虐待の当事者や隠蔽に関わったものを裁判に引きずり出す役目を果たす。
事件が事件なので、読み進み、ことが明るみに出るに従いどんどん暗い気持ちになる。カタルシスはない。
でも、被害者たちは本当に暗い暗い闇をその心に持って生きてきたんだろうと想像すると、本書を読み、たとえその闇で自分の心が暗くなったとしても、読んだ意味はあったと思う。

スポットライト 世紀のスクープ カトリック教会の大罪
ボストングローブ紙〈スポットライト〉チーム  

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