太平洋戦争終戦間近に北海道開拓民となる決意をして東京を後にした男の話。
妻と幼い息子を連れての北海道行きですが、男の一人称で語られることもあり、妻と子は影が薄いです。
開高 健 電子全集6 純文学初期傑作集/新人作家時代 1960~1969 Kindle版
戦中とはいえ定職(東京都庁の会計課)を捨てて覚悟の北海道行き。
開拓民には農地、(工兵隊が作る)住宅(建設を手伝うと日当がもらえる)ほかの特典付きで、定職を捨てる価値があると思ったようです。
ただ、主人公はそれらの特典を全て額面通り信じているわけでも無いようです。
ところが。
青森から北海道に渡ったところで終戦を迎え、元々頼りなかった各種特典がさらに怪しくなってしまいます。
軍が解体されるのに工兵隊が家を作ってくれるわけがありません。
この辺り読んでいて本当に怖くなりました。それまでの生活の基盤を全て捨てたところで国も無くなってしまうという、寄る辺ないにも程がある心細い状況。私なら泣いちゃいます。
それでも北海道の役人は、開拓民たちをすっぱり捨ててしまうようなことはなく、できる限りの面倒を見てくれます。
ただ、終戦以前にもそもそもの約束すら果たせない状況だったため、開拓民たちはとてつもない苦労を背負うことになります。
いやもうほんと。読み進めるほどに苦難が襲いかかって、胸が痛くなります。
しかし主人公はそれで腐ったり諦めたりせずになんとか生き延びようと行動します。その逞しさには頭が下がります。
約束が違おうが計算が狂おうが、やったことが全て無駄になっても。何があっても生きるために行動する。泥臭く足掻いていても、生きるために行動する姿は清々しいなと思いました。
これが面白かったのと、Kindleでポイント50%還元キャンペーンやってたので「開高健電子全集」また買っちゃいました。