「私あの後、…入院して。くぼやんにもらった色鉛筆でたくさん絵を描いたんだよ」 |
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「私ね。 |
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くぼやん私ね、 入院してたけど、治ってないのよ」 「なおって…」 「見えちゃうの。変なものが。今でも。 旭寿町にいたころよりはずっと減ったけど、何か机の下にいたり、友達の顔にベッタリとこう、ぐちゃぐちゃしたものが貼りついていたり。そういう子って、何かあったりするのよ。怪我したり、家族に不幸が起こったり」 |
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「そういうの見えちゃうと、私もそういう顔するみたいで。おかしい子、気味悪い子、感じ悪い子、ってなっちゃうでしょ。そりゃそうだよね。で、けっこうひどいことされたのよ。 |
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「あ?俺の耳?ぐちゃぐちゃしてる?」 |
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ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 「じしん?」
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23
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去れ 穢れしものよ
「あっ!」 |
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去れ ゴウッ! |
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去れ |
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「これは。エレイン?」 |
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ビシッ!! |
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!!
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「あああああっ!」 |
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お母さんは頭から洗うのか? うん そうか。 うん |
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お父さんの背中も流してくれるか。 いいよ ねぇ、おとうさん、
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この絵、なあに? |
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これか? |
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これは、獅子だ。 しし? そう。獅子。 かみさま… |
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強いの? 強い。 ふうん。
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「ではそろそろ失礼します」 |
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「私の勝手で迎えが遅れてしまい余計にお世話をかけてしまいました」
「いえいえそれはいいんですよ、私たちもそれだけ渉くんと一緒にいられましたし、ねぇ明日美」 「そうそうそう。渉くん、なんならお父さんと一緒にここに住んじゃえば?」 「……」
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「では、本当にお世話になりました」 「そうですかぁ。あ!駅まで送りますよ」 「いえ。二人で歩かせてください」 「そうですか…じゃ。渉くん、これ」 |
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「え。これ…、」 |
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「鍵?」 「うん。渡しとくから」 「鍵…」 |
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「家に来た時誰もいないと入れないでしょ」
「おばさん…」 「なんか困ったらいつでも来るんだよ」 |
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「うん」
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「……」 |
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「行っちゃったねぇ…」
「お父さんて、…もっと怖い感じの人かと思った」 |
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「私にはわかるのよ。 あ、曲がっちゃった」
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「あーあ。行っちゃったねぇ… ふと見上げれば、日本の空は電線だらけだねぇ」
「お母さんなに言ってんの?」 「こういう時は空を見上げるもんなのよ」 「なに言ってんの?」
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グヮシャッ! |
ガシャガシャガシャッ! |
カッ!! |
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(オオ、ミ
グオッ!! |
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コ…)
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ガッシャーンッ! |
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ゴウッ! 「ああっ!」 |
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「ノレ」 「シシ…」 |
「シシよ、ここで出てしまったらもう…」 「モウモドルイエモナイ」 |
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「…あいつが、お母さんの封印を破ってしまった」 「アイツハ ドコヘ?」 |
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「アレヲ オエバ ミサトモ ゲンセニモドレルナ 」 「それより。…エレインが…」 |
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「あいつのところに入っていたエレインが、消えてしまった」
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「どうした?」 |
「それよりくぼやん、町に入るならこんなとこ登ってもダメだよ」
「町に入るなら、 |
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つづく |
キシワタリ天涯地 23 2018.11.18 |
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