「みんなあの町が今どうなってるかなんて気にしてないくせに…
そこに住んでいた人を呪われた人とかって差別したりするの、なんでだろう?
くぼやん、そういうこと、何か言われたこととかない?」
「うーん、あそこ出身なの?って時々訊かれるけど、そういう意味だったのかなぁ」
「あー、くぼやん。
くぼやんて、やっぱりなんかいいよねぇ」
「いいかねぇ…人の気持ちがわからないやつって言われたことあるけど」
「でしょうね、ふふ」
「うん…。私、ちょっとね、イジメみたいなことしちゃってたし。
っていうか完全にイジメだなあれは」
「ああ、ああ。そんなこと言ったら俺の方がひどかったと思うよ。
いやホント。なんであんなことしちゃったんだろうって。
なんか、なんか違ってたんだよ顔を見るとなぜだかイライラしちゃって」
「芙多葉さんはね、見える人だったの。私と同じか、もしかしたらもっと」
「見える人?」
「通り魔事件、あったじゃない、5年の時」
「ああ…」
「そうなんだ。…俺は、俺もあの日のことは忘れられないな。俺はあの日は春加瀬とずっと一緒で」
「はるかせ?」
「春加瀬渉。5年の時転校してきた」
「あーハルカセ!転校生ハルカセ!あいつさぁーあいつさぁー」
「ははは。ハルカセムカツク?」
「そうそう。
…なんで知ってんの?」
「ははははは」
「クボヤもムカつく。
…でも…、なんかいいな」
「え?」
「私ね、ホント思うんだけどさ。
笑っちゃダメだよ」
「うん…」
「人生に絶対必要なのは同じ思い出を持ってる人だと思うんだ。
それがいいものでも悪いものでも…
同じ思い出を持ってる人がこの世に一人もいなくなったらもう生きていけないんじゃないかって。
そう思う」
「同じ、思い出…」
(現れる)
(我らの御子が)
(我らのために)
(…元へ)
(供えもて)
(!!ッ)
(我と共に)
(我と共に)
(ヒトと 獣の血を持つ者よ)
(光浴びし者よ)
「くぼやん…ここなんか、変だよ…」
「これは…これは…」
Horizon zone KISHIWATARI 32 2022.10.22
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