映画よりさらに暗くて深い闇。デイヴィッド・グラン著『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン オセージ族連続怪死事件とFBIの誕生』“Killers of the Flower Moon: The Osage Murders and the Birth of the FBI”を読んだら

以前感想を書いた映画の原作。元々は『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』という書名で刊行されていたものを文庫化にあたって改題したそうです。
映画タイトルに合わせたのと “インディアン”て表記がアレだったのかな、と思ったり。

デイヴィッド・グラン著『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン オセージ族連続怪死事件とFBIの誕生』

文庫版が474頁ということなのでかなり長い本です。脚注もかなり多く、その分の頁も含んでのページ数ですが、脚注のほとんどは関係者の発言などの出典(裁判記録、新聞記事、探偵による調査記録、インタビュー証言など)なので、事件を研究するとかでなければいちいち読まなくてもいいかと思います。それだけの調査を積み重ねた信頼できる(であろう)本なんだな、と思う程度で良いのではと。

当たり前かもしれませんが流れや出来事としては映画版とだいたい同じで、それらがさらに詳しく書かれている感じでした。
映画版がよくできているんだな、と感心して読んでいましたが、6.5割くらい読んだとところで「あれ?」。

オセージ族連続殺人事件の黒幕も逮捕され、映画で起きたことは終わっている。でもまだ結構ページは残っている。まだなんかあるの?

と思ったら。
そこまでは事件当時の時制で語られていたのが、そこからはおそらく執筆当時であろう2012年の取材の様子が語られていきます(原書の発行は2017年)。
で、そこまでは過去の、倫理観も未発達で犯罪捜査についても未熟な時代の、実話ではあるけれど歴史上の事件として読んでいましたがここからは現代の読者に迫ってくる内容になっていました。
オセージ族の土地からはもうほとんど石油が出なくなっていましたが、血縁を殺されたオセージ族たちの中にはまだ真相がわからず、著者の調査に期待する人も大勢いました。
捜査もされないままの殺人が数多くあったのです。
当時黒幕とされた男とは無関係の殺人も大量に起きて、放置されていたのです。
なんかもう果てしなくやるせない話でした。
もしも誰かになぜ差別がいけないことか訊かれたらこの事件の話をしようかと思います。人間を人間として扱わないことがどんな結果をもたらすか。
世界が嫌になっちゃうような事件についての本でしたが、読んで良かったと思います。なにより “誠意” のある本だと思いました。

(映画の感想はこちら →名優二人のデコの皺合戦。映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』 “Killers of the Flower Moon”を観たら)

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