夏休み百恵映画劇場『絶唱』を観たら

夏といえば文芸映画。
文芸映画といえば山口百恵。
というわけでいつだったか録画したきり観ていなかったこの映画を鑑賞。

『絶唱』

冒頭、山陰の大地主の家にたいそうな花嫁行列がやってきます。誰も見たことのないような美しい花嫁。
しかしなんとこの花嫁、すでに死んでいたのです。
文芸映画かと思ったら怪奇映画だったのでしょうか?
花嫁以外もみんな死んでる行列だったりするのでしょうか?
間違えて『ゾンビの嫁入り』を再生してしまったのでしょうか?
それでもいいか、夏だし。と観続けましたが、怪奇映画ではありませんでした。
死の花嫁行列になってしまった悲しい理由があったのです。それが語られていきます。

その地域で絶大な権力を持ち、住民たちを支配している大地主の家の跡取り息子が山番の娘と恋に落ち、それを認めない父に反抗して駆け落ちしてあれこれかわいそうなことになる、というお話でした。

地主の息子園田順吉(三浦友和)と山番の娘小雪(山口百恵)、いきなり相思相愛です。
『伊豆の踊り子』でも『潮騒』でも、二人の出会いから惹かれ合っていく経過が描かれていたように思いますが、今回はいきなり愛し合ってます。
「二人の映画も3本目だし、そういうとこはもういいよね、そうなるのはみんなわかってんだからまどろっこしい場面はいらないよね」
ということでしょうか。原作どうなってるか知りませんが、「百恵映画」くくりではこれでいいのかな、と思いました。
序盤で、しばらく会えなかった二人が道のあっちとこっちから駆け寄って抱き合うシーンがありますが、それを見ると、
「ああ、この二人はもう肉体関係があるんだな」
とわかります。そういう抱き合い方です。演出か実生活か知りませんが。なんて話はどうでもいいか。
下卑た言い方ですが「地主の息子が使用人の娘に手をつけた」ってのがそもそもの始まりだったのかもしれませんね。

駆け落ちした二人は貧しいながらも幸せな生活を始めます。
結婚式などはできませんが、友人たちがお祝いにやってきます。
ささやかな生活ですが順吉も小雪も幸せですしかし。
戦争が始まり、やがて順吉にも召集令状が。二人は引き裂かれます。
古い因習から逃げてきた二人でしたが、戦争からは逃れられませんでした。
離れ離れになった二人は毎日決まった時間(午後3時)にお互いのいる方向に向かって同じ歌を歌う約束をして実行します。

しかし小雪はともかく順吉は戦況の悪化にともない歌を歌うことも小雪へ手紙を書くこともできなくなっていきます。
寂しい小雪。順吉の存在が感じられなくなる中で病気になってしまいます。
周囲の人たちは基本親切なのですが、中には大地主園田の命令で仕方なく小雪に順吉を諦めさせようとする奴も出てきたりします。そいつはそいつで罪悪感を抱えることになります。
二人の周りでいろいろなことが起こりますが、この映画展開が早く、どのエピソードもこのエピソードもサラサラ流れるように進んでいくのでなかなか気持ちが入りません。

ベテラン俳優陣の熱演や安定の演技はあるのですが、
「何が起ころうと結末は死んだ花嫁。そうなんでしょ」
という心理状態が、途中のエピソードを消化試合みたいに感じさせるのでしょうか。

順吉は無事復員するのですが、すでに小雪は危篤状態で、順吉の帰宅を待っていたかのように息を引き取ります。
あまりに不憫な結末に、順吉は決心します。
「小雪の婚礼と葬式を一緒にやるんだ」

こうして無事、死んだ花嫁のいっちょあがりとなりました(無事?)。

ここまでサラサラと早い展開でしたが、この婚礼葬式はじっくり描かれます。
そして。
そしてそして。
死んだ花嫁との婚礼シーン。
かなり不気味で、私は怖かったです。
高砂や〜って、三三九度って。
だって死体だよ。それ死体だよ。グダ〜ってしてるじゃん。青白いじゃん顔面。どっちかっていうと「血を吸う」シリーズじゃん。
クライマックスで泣くどころかこんなことを考えてしまうのは私の心が薄汚れているからでしょう。

あと映画を観終わった後で「順吉は園田家の財産を食い潰しちゃいそうだなぁ」などと思ったのも私の心が汚れきってるからだろうなぁ。恥ずかしいなぁ(嘘)。

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