傑作怪奇人造人間SF!メアリ・シェリー『フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス』“FRANKENSTEIN;OR,MODERN PROMETHEUS” Mary Shelleyを初めて読んだら

読みたい読みたいと思いながらなかなか読まずにいた『フランケンシュタイン』。やっと読みました。

フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス(光文社古典新訳文庫)

(この版のカバーは『フランケンシュタイン』だけですが、「あるいは現代のプロメテウス」ってかっこいいサブタイトルですよね)

まえがきに、「旅行に行ったら雨がちで退屈だったのでみんなで幽霊譚を書くことにした」ということ、そして物語を完成させたのがシェリーだけで、それがこの『フランケンシュタイン』だったということが書かれています。
書き始めたら「こりゃなんかデカいもん釣り上げられそうだ」と夢中になったんじゃないかと思います。生きた物語が成立する過程の一つとして興味深いと思いました。

北極探検に向かう探検家ウォルトンが姉に出した手紙から物語が始まります。というかその手紙の内容で終始します。
手紙の中に船から何か異様なものを見たとかソリに乗った男を助けたと続き、助けられた男、ヴィクター・フランケンシュタインの回想の記述になり、その回想の中でフランケンシュタインによって作られた人造人間の回想が語られるという構造になっています。

この構造も面白いのですが、物語の筋自体とても面白かったです。
生命を得たけれど醜さゆえに自身の造物主であるフランケンシュタインから怪物だの悪魔だのと呼ばれてしまう人造人間であったが、ある愛情あふれる家族の姿を盗み見ているうちに自分もその愛情の輪に入りたいと思うようになる。なにしろ思いやりに満ちた人々だったので、こんなに醜い自分でもきっと受け入れてもらえると思い込み、それでも自身の醜さを自覚しているがゆえに周到に計画してその家族の前に姿を現す人造人間。一瞬にして拒否どころではない反応をされる人造人間。
そこまでの人造人間の心理や行動の描写が細やかだっただけに本当にかわいそうになりました。
全世界から拒否されてしまった感じ。現代の現実世界でもそんなふうに感じてしまう人はいるような気がします。
そして、全世界から拒否されたと感んじらどうなるか?
ひとつの道が “怪物” になってしまうことです。
醜いから怪物になるのではなく、怪物として扱われるから怪物になってしまうのです。

“怪物”はヴィクターに復讐心を抱きますが、一方で自分の伴侶を作ってくれるよう頼みます(脅迫か)。
仲間が欲しいのと同時に自分が生命を持つ者だと確認したかったのかもしれません。子孫を残せば、自己複製できれば、生物であるという証明になりますからね。

物語は悲しいまま結末を迎えます。
いろいろ考えてしまう要素満載の怪奇小説でした。

blinkani

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