日々神経剥き出し。『つげ義春日記』を読んだら

特につげ義春ファンというわけではないのですが、Kindle Unlimited対象になっていたのでふと読んでみました。

つげ義春日記 (講談社文芸文庫) Kindle版

「つげ義春といえばこれ」ってくらい有名な絵がカバーになっていますが、やはりインパクトありますね。今回もこの絵に惹かれて読んだようなものです。

昭和50年から55年までの本人の日記の他に、誕生(1937年)から2020年(83歳)までの「年譜」が掲載されています。

精神が不安定だったこともあって全体的にネガティブな気持ちを綴っていることが多かったです。

“散歩は好きなことではあるが、不幸を背負ったまま毎日あてどもなくうろつくのは疲れる。”

『つげ義春日記』

とか書いてます。これは生きるのしんどいですね。

この時期は漫画家として自信がなかったようで、古いカメラを仕入れて売ったり、古本屋でもやろうかと副業を考えていたそうでこんなこと書いてます。

“自分が古本屋を始め、手塚や石森、永島などに原画を描いて貰いに行く空想をしていたら、侘しくなった。”

『つげ義春日記』

そりゃ侘しいわな。
しかし正直な人だ。
ていうかそこまでさらけないと書く価値のあるものに辿り着かなかったのかな。身を削るような文筆だったのかもしれません。奥さん怒ってたらしいし。

家族を愛し、その行く末を心配しているのですが、妻マキと喧嘩したり息子正助の面倒を見るのが負担になったりと家族が重荷になる話もたくさん出てきます。

“マキがいないと気兼なしに不安に浸ることができる。”

『つげ義春日記』

寝ているとマキに責められるが不安に襲われると立っていても座っていてもどうにもならなくて、横になっているしかないと書いています。こりゃ辛い。

“自宅で単純な手作業で収入が得られる職業につきたい。職業を変えたい。しかし実行する勇気はない。現在の職業(マンガ家)がもっと社会的に評価されたらよいと思う。それは収入の保証にもなるからだ。”

『つげ義春日記』

私もそうですが、人と関わるのが苦手な多くの人が同じようなことを思っていそうですね。

我が身を見るような、暗くて辛い日記でしたが、年譜にはこんな記述もありました。

“子供に買い与えたファミコンでスーパーマリオブラザーズ2をクリアする。”

『つげ義春日記』

なんかホッとしますね。つげ義春とスーパーマリオ。ブロック壊してコインをピロンピロンと取っていたのでしょうか。

まぁでもおそらく。
この日記のように自分の中を何か痛いものに触れるまで掘り進めないと “表現” なんかできないんだろうと思いました。掘り進めて掘り進めて、剥き出しになった神経にキュッと触れて初めて、書く価値のあるものにたどり着ける、そういうものなんだろうな、と思いました。

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