読んだ本やらやら3冊 2021年5月

5月ももうすぐ終わり。
ということで、最近読んだ本やら買った本やら場合によっっては読みかけの本やらのお話をします。

読んだ本やら2021年5月

まずはおなじみ刑事が傷だらけになるお話。

『傷だらけのカミーユ』ピエール・ルメートル /著

『傷だらけのカミーユ』ピエール・ルメートル /著

『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』で大評判。ピエール・ルメートルのカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ長編最終作。世界中で大ヒットしてるのにもったいない最終作(短編だか中編だかはあるらしい)。

イレーヌ事件から5年後、アレックス事件から1年後の事件です傷だらけ事件。いやそれにしても「傷だらけ」にも程がある。カミーユボロボロです。いつもだけど。

宝石店強盗事件に巻き込まれて命を狙われるようになった恋人を守るために職を賭して奔走するヴェルーヴェン。
て話です。
確かに「て話」なんですが、そこはルメートル。一筋縄ではいきません。
さすが「一筋縄ではいかない」という言葉が世界一似合う作家ルメートルでした。
『その女アレックス』『悲しみのイレーヌ』の複雑トリッキーな構造と比べるとオーソドックスですが、二箇所ほどで思わず「え?そうなの?マジ?」と口に出しそうになりました。

『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』ケン・リュウ/編

『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』ケン・リュウ/編

ケン・リュウ編集による、中国SFアンソロジーです。
中国語で書かれたSFをケン・リュウが英訳したアンソロジーですが、和訳はその英語からなのか、中国語から直なのか特に記載はありませんでした。でも英語からの和訳なんだろうなぁ。

中国SFに関しては、ケン・リュウの短編集と『三体』シリーズしか読んだことがなく、これで3冊目。アンソロジーということで色々な作家が読めてお得でした。

わかりやすく分断された階層社会のお話「折りたたみ北京」、ひとつの「国」しかない世界の言論統制の実態を描いた「沈黙都市」、過去に作られた巨大な遊具が歩き出す「龍馬夜行」が印象に残りました(「龍馬」は「りゅうば」と読みます。実在するみたいです↓

この三作以外も、全体的に切ない話が多かったように思います。
そういえばそろそろ『三体』の第3部が出るんじゃなかったっけ?と思って調べたらもう出てました。

三体III 死神永生 上

『こころ』夏目漱石/著

『こころ』夏目漱石/著

『それから』『門』に続く、「若いうちに生活に困らない財産を手に入れると信用していた人に騙されたり友人の奥さんや彼女に手を出して酷い目に遭う」三部作の最終作(たぶん)。

しかしさすが文豪。この『こころ』は「謎な先生」の秘密でかなり引っ張られます。先が気になるのでどんどん読んじゃいます。

前半と後半で別人の一人称という構成も大胆というか思い切ったものですね。感心しました。文豪相手に。

この『こころ』は、娘がその表現に多々感動していたのですが、私が気になってハイライトした文章をいくつか紹介します。

洋服を着た人を見ると犬が吠えるような所では、一通の電報すら大事件であった。

これはちょっと笑っちゃいました。田舎の表現としてバリエーションを考えたくなります。なんか都会的に気取ってると「犬に吠えられる」って面白いですよね。

二人は東京と東京の人を畏れました。それでいて六畳の間の中では、天下を睥睨するような事をいっていたのです。

地方出身者としては耳が痛いです。でも若いってこうういうことですよね。世界が狭いゆえの全能感と、そこから出た時の無力感。これを解決するのが「引きこもり」ですね。「解決」にはならないか。

私はこの幸福が最後に私を悲しい運命に連れて行く導火線ではなかろうかと思いました。

なんか心配性の不安感みたいですけど、過去の後ろめたいことが大きすぎるとこう感じるのかもしれません。

というわけで今回は小説ばかり3冊ご紹介しました。他のジャンルも読んでいるのですが、小説は一気に読むべきだと思っているので、その他の本は一時停止させてつい小説を優先させてしまいます。
次は小説以外もご紹介できるように頑張ります。
といいつつ『『三体III 死神永生』を読み始めてしまいました。長げーんだこれ。

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