日々棒組み797 「おじいちゃん」と呼ばれた日

少し前の日曜日の午後。
散歩をかねて駅向こうのブックオフを目指して歩いていた。
東武スカイツリーラインの高架をくぐった先にある小さな居酒屋の前で、4歳くらいの女の子がお人形を手に、ひとりでしゃがんで遊んでいた。
目の前はそこそこ車が通る県道で、小さな女の子がひとりで遊んでいるのはちょっぴり異様な感じだった。
感じだったがそこを通らないとブックオフに行けないのでやや警戒しながら近づいていくと女の子は顔を上げ、じっと私の顔を見つめ、言った。

「おじいちゃん」

え?
おじいちゃんじゃないし。
戸惑う私に女の子はなおもニコニコしながら

「おじいちゃんおじいちゃん」

2回言っても君のおじいちゃんじゃないし孫もいないし。
あらゆる意味でおじいちゃんじゃないし。

「おじいちゃんおじいちゃんヤッホー」

ヤッホーて。
ヤッホー言ってもおじいちゃんじゃない、よね?
誰かに見られても不審に思われない程度に軽く手を振って女の子の前を通り過ぎた。

ブックオフでは小説も漫画も特撮本も未確認何とか本も特に買いたいものは見つからず、手ぶらでの帰り道。
女の子はまだ同じ場所で遊んでいたが、もはやおじいちゃんを見上げることもなくお人形遊びに集中していた。
何だろう。
ちょっぴり寂しい気持ちになったんだ。

忘れられたおじいちゃ、いや私は傾く日差しに目を細めながらつぶやいた。
「老兵は死なず。ただ消え去るのみ、か」

最後んとこは嘘。

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