日々棒組み639 何かが台無しになった暑い朝

あーもうあれから一年なんだね。
あれから。
去年の健康診断から。
こんなことがあった去年の健康診断から(→日々棒組み551 軽く息など止めてみなさい)。

そして今日、健康を診断してもらいました。
今年は胃の検査を拒否したので、前日にたっぷり豚肉をいただきました。

会社に着くとすでに健康診断は始まっていて、私は最後尾の椅子に座った。
最初に視力と聴力の検査なのだが、視力聴力検査員のおじさんが、私の前で検査を受ける社員に訊いた。

「今日は朝から何も食べたり飲んだり、何かしてませんか?」

何かしてませんか?

事前に言われていたので、食べたり飲んだりはしていないが、「何か」?
何かしてないか?

そうか。
この質問から健康診断が始まっているのだ。答えられないと何か認知的な何かだと診断がくだされるのだ。おのれ。おのれ健康診断。おのれ厚生労働省。

私は必死で考えた。

何かしたぞ。俺は何かしたぞ。
朝起きて…
起きて…
目覚まし時計止めた。
テレビ見た。
高島礼子の傷心の記者会見に「さすが女優…」とつぶやいた。
歯を磨いた。
服を着替えた。
妻に行ってきまチュウをして家を出た。
右足と左足を交互に出して駅に向かった。
道すがらながらスマホをした。
駅では階段を使ってホームに上がった(健康ポイント+1)。
埼玉県民の分際で次の東京都知事にふさわしい人間像について深く深く考察した。
コンビニでお昼のおにぎりと健康診断の後で食べるためのメロンパンを買った。
ああ、人とは意識しないまま何とさまざまな行ないを為していることかよ。

「次のかた」

呼ばれた。
準備は万全、係の者の前に移動。

「今日は朝から何も食べたり飲んだりしてませんか?」

「あ、はい」





何だよ。

セリフを変えるなよセリフを。

俺の準備が台無しじゃんか。

くやしくてくやしくて。終わった後で食べたメロンパンはキャベツのような味がしたよ。


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