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え?くぼやん、知らないの? |
春加瀬くん、一学期終わったら転校しちゃうんだって。 |
「春加瀬…」 |
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「なにすんだよ、」 「なんだくぼやん、最近ノリ悪いよなぁ」 「そんな、ガキみたいなこと、セクシーダイナマイツ!」 「うおっひ!くぼやん久々のダイナマイツ!今のはきいたぜ」 |
「………」
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「え?」 |
「もうほらそのバッグもさー、お疲れ様でしょ?ね」 |
「うん…」 |
「ぜ〜んぜん。夜中におねぇちゃ〜んって来たんだよ。何事かと思ったよ」 「えー、どうすんの?男の子?おばちゃんなんか心配になっちゃった。 いざって時はどうすんの?いざってどんな時かわかんないけどさ」 「いざって時は、…がんばります」 |
「いざって時は素手で掴んでポイって投げちゃうよね、渉ちゃん」 「素手はちょっと…」 「渉くん…、旭小も明日で最後だねぇ。お友だちとも明日でお別れだねぇ」 「…はい」 「だからほら、これしょってまた来ればいいのよ!旭寿町に。何度でも」 「うん。うん」 |
「でも、明日から夏休みだって日に成績表とか配るのってダメだと思うんだよね。 |
「これから楽しい夏休みだってのに出鼻をくじかれるっていうの?台無しにするっていうの?それに今日渡されたって二学期が始まる頃には忘れてるよね、いろんなこときれいさっぱり。 |
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「春加瀬っ!」 |
「春加瀬、お前、今日で…」 |
「それはいいんだけど…」 |
「ちっちゃいころ、ボール遊びとかするとすぐケンカしちゃって。 |
「頭にくることがあっても、それがたとえ相手が悪いと思っても、三回はがまんしなさいって言われてたけど、でもぜんぜんそんな、がまんなんかできなくて、すぐ手を出しちゃって。みんなに怖がられてたんだ。 そんなだったから。 そんなだったから友だちってそういうの、ひとりも、いなかったんだ お母さんも去年の三月に、し、死んじゃって」 |
「もうなんにも言ってくれないよ。 俺には友だちっていなかったんだ。 …いなかった」 「春加瀬、俺、俺、…」 |
「じゃあな、 |
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春加瀬、俺は… |
俺は… |
俺… |
俺… |
俺…行かなきゃ! |
あそこへっ! |
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(御子がおられた!) |
(御子がおられた!) |
「お母さん…」 |
つづく |
キシワタリ天涯地 19 2016.08.08 |
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