「鷺楽さん、どうしました?
まだ仕事の電話ですか?」
「いや、うちにかけてるんだけどつながらないんだよねー」
「固定ですか?携帯?」
「どっちも。娘の携帯も」
「こっちの電波の問題かなぁ、呼び出しにもならない」
「私、会社出る前に日本に電話しましたよ。普通に通じた。
受信拒否されてるとか。ずっと帰らないんで怒ってるんじゃないですか?」
「そんな今さら。
ああでもこの前、建てたばかりの家を引っ越したいとか言うからこっちもいろいろ言っちゃったんだよなぁ…あれかなぁ」
1月11日夜
埼玉県南部 旭寿町において広範囲にわたって建造物が崩壊。
大量の瓦礫により周辺道路が封鎖。
崩壊建造物の瓦礫により被害地域への進入は不可能。
封鎖地域周縁に於いて電子機器の不規則な異常動作が発生。
封鎖瓦礫周辺で108名相当の生存者を発見との報告。
全員意識の無い状態で救急搬送。
(108名 “相当” の意味は不明)
「えんそくは手をつないでなきゃいけないんだよ」
「どうして?」
「手をはなすと車にどぉんてなっちゃうでしょ?」
「ふうん…」
「ぼくはいつもくぼやんと手をつないで行くんだ」
「くぼやん?」
「ともだちのこと」
「おともだち。くぼやん」
地図から消えた町
昔から「地図から消えた村(あるいは町)」のような怪談や都市伝説は多くありました。 時代背景や、村の来歴、血なまぐさい事件などがもっともらしく語り継がれてきましたが、その真偽のほどはたいてい不明確のままでした。
しかし。 埼玉県のAK町はほんの数年前に本当に日本の地図から消えてしまいました(生存者の人権擁護のため町の名前はイニシャル表記にしています)。 大量の建造物が町を取り囲むように崩壊し、封鎖状態にしてしまったのです。 崩壊事象発生直後は各マスコミ、ネットニュース、SNSもAK町一色だったのは皆さんご記憶かと思います。
なぜ消えたのか?
原因として、公式には「未確認地下天然ガスの連鎖爆発の可能性」とされました。「未確認」の「可能性」です。
そして、この後に「今後新たな情報が得られた場合は随時修正される」というような文言が続きます。
確かな原因はわかっていない、ということですね。
そんな曖昧さもあってマスコミやSNSにも原因についての憶測があふれました。 以下代表的なものを挙げます。
1.某国からのミサイル攻撃。核兵器であった可能性が強い。今も町が封鎖されたままなのは放射能で汚染されているからである。
2.テロリストの破壊活動。現在も大量のテロリストに占拠されている。
3.宇宙人の侵略攻撃、占領。事象当日の夜、埼玉県でUFO目撃情報。
4.オカルト的な原因で封印。悪霊の祟り、神の怒り、悪魔の呪いetc.
どうでしょう?
この他にもピンポイントで有名企業や大富豪の名を挙げて語る細かな陰謀論は無数にありましたがここでは割愛します。
しかし、私がこのサイトを立ち上げたのは、AK町が、ここ数年どころか百年単位、場合によっては千年単位で呪われていた可能性に気づいてしまったからです。
調べれば調べるほど底が知れない恐ろしさがあの土地にはあったのです。
古から呪われていた? 二つの村、血まみれの伝承
「旭村と寿村?」
「そう。私もあのサイトを見るまで聞いたこともなかった」
「古い地図とか調べるとそうなんだって。昔からひどい事件が起こっていて、戦前くらいに一度全滅して地図から消されたって」
「都市伝説みたいな?」
「さあ。なんか死の世界とつながっていて、死を司る一族がいたって」
「一族?」
「そう。
“きしわたし”一族」
Horizon zone KISHIWATARI 31 2022.05.29
©Masakagemaru Terada/oto-ra.com