心配性の就活生の妄想か?浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』 を読んだら

就活って、「不採用」になると自分を否定されたように思えてしまって、そりゃもう神経が削られるもので、そうなると失敗しないように服装から言葉使い、歩き方から椅子の座り方、呼吸の仕方までマニュアル通り、他の人と同じようになっていくのは痛いほどわかります。
真面目で心配性の就活生があれやこれや不測の事態を想定し過ぎるとこの小説みたいなことを思いつきそうだな、と思いました。

*以下、内容に触れた感想になります。核心には触れませんが、「謎」や、刻々変わる状況が読ませる力になっている小説ですので、これから本作を読む可能性のある方はこの先は読まない方がよろしいかと思われます。

浅倉秋成 著『六人の嘘つきな大学生 』(角川文庫)

前半は六人のうちの一人の学生の一人称で進みます。彼もとても優秀なのですが、他の五人と比べると「普通」に感じられます。

とある大人気IT企業の一般採用試験で、五千人の志望者の中から選び抜かれた六人がいよいよ最終試験となったグループ面接に挑みますが、面接直前になって採用条件が変わってしまいます。
「場合によっては六人全員採用もあり得る」が「採用は一人だけ。その一人を六人で話し合ってね」に変わってしまいます。

「ゴールポストを動かす」という言い方がありますが、「ゴールは6個あるから蹴り込んだ人はみんな採用ね」が「絶対入るゴールが1個、誰が蹴るかはあんたらで決めてね」になっちゃったわけです。
今まで「六人で一緒に入社できればいいね」と仲良しグループっぽくなっていたのが突然みんなライバル。
そして当日、さらに場を混乱させる不測の事態が起こり、なにが起きるか全く予測不能になっていきます。

読者は何が起きたか、誰が採用になったかわからないまま後半に進むことになります。徐々に謎が明かされますが、そこでは就活全般に関する疑問や矛盾も語られていきます。この辺り、就活経験のある人なら似たようなことを考えたことがあるかと思います。ただまぁこの六人、それぞれ弱点はあるものの現実にいたら就活生の上位15%くらいには入りそうな優秀な人材なので、一般レベルの就活生が読んだら「何贅沢言ってんだよ」とか思われそうな気がします。

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