夏休みといえばやっぱり読書感想文。
今年の夏はこれを読みました。
『こちらあみ子』が映画も原作も良かったので同じ作者のこれを読んだのですがこれはなんと芥川賞受賞作。
どーだ。
芥川賞どころか、直木賞も本屋大賞もサムライジャパン野球文学賞も埼玉文学賞も受賞作を読んだことがなかった私がいきなりの芥川賞作品にチャレンジです。
普通に読みやすいけど不思議なつくり。
町で有名な「むらさきのスカートの女」を観察する女「黄色いカーディガンの女」の一人称で話は進みます。
「むらさきのスカートの女」は「黄色いカーディガンの女」の観察によると社会生活に対していろいろ欠損のある人物とされています。
読者が、
「ああ、こういう感じの人いるよね」
とありきたりな印象を持った頃に「黄色いカーディガンの女」もなかなか変なやつだとわかってきます。
でも読者は「黄色いカーディガンの女」の一人称文しか頼るものがないので、「変な奴が変な奴のこと書いてるのを読むしかない」という頼りない状況に放り込まれます。でも読むのをやめられないという心細い状況。
面白いんです。独特のミクロサイズのユーモアがたまんないですが、そういうのをこねて不穏な空気が漂いまくっている。
読み始めたところからたくさんの「???」が浮かんで、それに引っ張られて読んでいるとプチプチと「?」が解決されていきますが、ひとつ「?」が解明するとプチプチと新たな「?」が発生して、また引っ張られていきます。でもけっこう快感なプチプチ。
そして解釈の余地がありまくる結末。
恐るべし芥川賞。
受賞作的なものに興味が無くても、「なんか経験したことのない読後感」を求める人にはお薦めです。
伏線回収がどうのって気になる人にはまったく薦めません。
巻末の芥川賞受賞エッセイも興味深かったです。作者の物差しのメモリが見えるようで。
今村 夏子作品、他にも読んでみたくなりましたね。
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