『ビッグ作家 究極の短編集 楳図かずお』を読んだよ

ビッグ作家というのは漫画雑誌ビッグコミックに書いてた作家という意味だそうです。 その中でも創刊当時(1968〜1972)に掲載された(一部他の雑誌に掲載されたものもあります)ビッグな作家の短編を集めたのがこのシリーズ。他にもビッグに書いてたビッグな作家が揃ってますが。今回はこのビッグ、楳図かずお先生の短編集でございます。

子どもの頃読んで、本当に怖くてしかもめまいがするくらい不思議な思いをしたのが「残酷の一夜」。 ある夫婦に待望の赤ちゃんが生まれるのですが、そこに変な男が現れて…、あとはいやーなことが立て続けに起こります。いや〜な漫画ですが、ずっと忘れられなくて、もう一度読みたいと思ってた漫画です。いま読んでもいや〜な漫画だった。また読も。

「夏の終わり」は、海水浴場のシーンから始まりますが、砂浜にパラソルが並んで子どもや若者が楽しそうに海で遊んでるのに、すでにいや〜な感じなんですね。波とか。あれはすごい。真夏のビーチをあんなにいや〜な感じに描ける人ってなかなかいないのでは。

「首」も怖かったなぁ。でも妊婦さんは読んじゃだめです。

「ドアのむこう」は怖くて不思議で悲しい話。どこかがねじれていたおかげでひどいことが起きます。どこがねじれていたかわかった時はびっくりします。そしてすべて手遅れ。

最後の「お菊ろの」は、画風がガラッと簡略になり、みんながまことちゃんみたいにしゃべる(「ごめんくらさい」「どなたれごらいますか」という調子)ので、いや〜な漫画が続いたあとにお笑いで読者の心を癒そうとしてるのかなと思ったらやっぱり怖かったれす。ギャグ漫画ではあるんでしょうが。

全部で10編収録されてますが、短編の中で一人の人間の人生を描き切っちゃうような話が多くて、いまさらながら、さすがだなぁと思いました。 現在と過去を行ったり来たりとか未来の出来事を見たりとか、そもそも時間がねじれていたりとか、「時間」に関わるお話が多いのですが、巻末の作者インタビューにその理由が書かれていました。時間テーマをSFと感じさせないように描いたんだそうです。 インタビューでは他にも、アイデアのメモは「てにをは」をはっきり決めて書く、とか、「僕はお話主義」とか、興味深い話がたくさん出てきました。 登場人物がほとんどみんな不幸になる、怖くていや〜なお話ばかりだけど、きっとまた読んじゃうな。 死ぬ直前とかに読もうかな。そしてこう言うのだ。 「ああ、こんな人生じゃなくて本当によかった」

楳図かずお ビッグ作家 究極の短篇集 (ビッグコミックススペシャル)
楳図 かずお

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