夏休み戦争映画特集最終回は『戦場のメリークリスマス』。
英語タイトルは『Merry Christmas, Mr. Lawrence』。
監督:大島渚、日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドの合作映画。日本公開は1983年。
この映画、男しか出てこないんだなぁ、と思って観てたら回想シーンにちょっろっとおばさんみたいのが出てきただけであとはみごとに男だけ。男の世界。いろんな意味で。
ヨノイ大尉(坂本龍一)が、俘虜のセリアズ(デヴィッド・ボウイ)に同性愛的な気持ちを持つんだけど、部下にも俘虜たちにもあっという間にさとられちゃって、なんか切ない。セリアズを殺そうとして阻止された部下が「この男は隊長の心を惑わす悪魔であります!」とかいって切腹しちゃうんだもん。いいのかキャプテンヨノイ。
セリアズの気を引こうと剣道の練習ででかい気合の声を出してうるさがられたりするのも切ないが、そこには異文化交流の難しさも感じる。日本人が求める清さ、美しさはイギリス人には理解できない。
ハラ軍曹(たけし)は、俘虜同士が英語で会話すると、自分がわからないからイライラするんだけど、その時のイライラと恐れが入り混じった目つきがわかりやすくて面白い。ハラ軍曹は俘虜たちに厳しい人物で、たぶん唯一日本語を解し、意思の疎通ができる俘虜の連絡係、ローレンス(トム・コンティ)にさえすぐに暴力を振るうが、切腹(自殺)した兵士の家族に恩給が支給されるよう、戦死扱いにするなど、こういう職務じゃなかったらきっと情にあつい善人なんだろうな、と思わせる人物。
ずっとがまん強く温厚な人物として描かれていたローレンスが、日本兵の葬式の場で激昂して暴れるシーンがあるが、ローレンスが暴れている間もハラ軍曹は冷静に読経を続ける。ハラ軍曹は座って読経しているだけなので何を考えているかわからないが、単純な人間ではないことは感じられる。
ヨノイ大尉、ハラ軍曹、セリアズ、ローレンスの四人で惹かれあったり反発したり殴ったり殴られたりキスしたりされたり「メリークリスマス」って言ったり言われたりしながら物語は進むが、最後はおたがいにある程度の理解までは至ったと思いたい。あくまで「ある程度」だろうけど。
この映画には原作があって、映画のクレジットによると『THE SHEED AND THE SOWER』。種とシャワー?
「種と水やり」かと思ったらそうじゃなくて、「種と種をまく人」って意味だって。
調べたら、これは三部作の第二部のタイトルで、ハラ軍曹のエピソードは主に第一部かららしい。ちょっと読んでみたい。
日本語のセリフが聞き取りにくくて、特に坂本龍一は聞き取れないセリフの方が多いくらい。ただ、自分を、死に損ねた男と思っているがゆえの自信の無さからのもごもご喋りと思えば思えなくもない。全字幕で観るのがベストかも。
1983年の映画は他に『ションベンライダー』、『幻魔大戦』、『ダーククリスタル』、『時をかける少女』など。80年代だなぁって感じ(そりゃそうだ)。
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↓原作小説ですが「映画版」ってよくわかんない表記が。
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