父娘断絶の危機を救うアニメ『文豪ストレイドッグス』を観たよ

「４月からこのアニメが始まるからちゃんと録画してよね、なぜか家にいるおじさん」
と娘に言われたのは3月の初め。
うちの録画機の予約録画は一週間先までしかできないので忘れないようにしなくては。忘れたりしたらえらいことになるのだ。

「4月の何日から始まるの？」

「さあ。調べればわかるんじゃない？」

調べてみた。ネットだけは私の味方である。
放送開始日はわかったが録画予約はまだできないのでiPhoneのカレンダーにスケジュールを入れた。放送日の一週間前に、
「文豪ストレイ録画予約！」
絶対忘れないように「！」と入れたみた。忘れたりしたらえらいことになるのだ。

しかし。
どんなアニメなんだ『文豪ストレイドッグス』。
おそるおそる娘に訊いてみた。
「なんか文豪が異能力で闘う話」

？

文豪？
異能力？
闘う？

マニアックな三題噺か？
さらに（おそるそる）訊いてみると、太宰治だの中島敦だの宮沢賢治だの江戸川乱歩だの国木田独歩だのといった実在の文豪が異能力を使ってなんか闘うというお話らしい。
原作の漫画があって、娘はそれを読んでファンになったらしい。
でも文豪の異能力ってなんだよ？

「異能力って、宮沢賢治は雨ニモ負ケないとか？」
「そう！よくわかるね！」
「太宰治は走る、とか？」
「あー、そっちじゃないんだなー」
「人間失格か？」
「ピンポーン！」

人間失格。
どんな能力だ。
君は合格、おまえは失格、とかジャッジされちゃうのか？かなり恐ろしいな。
娘によると海外文豪も出てくるらしい（西洋妖怪かよ）。
ドストエフスキーとかゲーテとかモンゴメリーとかマーガレット・ミッチェルとかかな？
モンゴメリーの異能力はおしゃべりとか夢見がちか？ミッチェルは風が吹いてビューン、ってどっか行っちゃうな、きっと。
カミュは出てこないのか？異能力はペスト。皆殺しだ、もう。
森鴎外は出てくるの？と訊くと、主人公チーム（太宰側）の敵役みたいなので出てくるらしい。異能力は「横顔写真に落書きされる」だ（嘘）。
娘のごひいきキャラは中原中也だそうだ。能力は、「汚れちまう」だな、きっと。それでどうやって闘うのかわからんけど。「汚いぞーおらおら汚いぞー着けちゃうぞー」か？ガキかよ。

そういえば本棚に中原中也の詩集があったはずだな。
と言うと、
「あ、お父さんの本棚から梶井基次郎の本借りて読んでる」
うげ！梶井基次郎も出てくるのか！異能力は、異能力は、ええと、ええと、
「檸檬をどこかにぽんと置く」だ。
そんなの俺にもできらぁ！

娘に、
「そういうの全部電子書籍で無料で読めるんだよねぇ」
と言うと、
「でも、本で読みたいじゃん」
だと。
おまえ、
なんかみどころあるな。

というわけで、アニメ『文豪ストレイドッグス』を観ました。
次回も観ます。
原作も読みます。
娘が持ってるから。
そのかわり娘には本屋に行って文豪の本を買ってあげることにします。
『文豪ストレイドッグス』よ。娘とのつながりをありがとう。
しかし娘よ。
ひとつだけ言っておこう。
宮沢賢治はあれやあれもどれもこれもいいが。だがしかし。
宮沢賢治は、
『春と修羅』だ。