「これは恋物語ではない」とわざわざことわってから始まる男女が出会う物語。映画『(500)日のサマー』(500) DAYS OF SUMMER を観たよ

冒頭、原作者のメモとして、「これは架空の物語で実在の人物との類似は偶然である」とことわりが入るが、そのあとのひと言でサマーには実在のモデルがいることがユーモラスに伝えられる。
それからパパッとこれから出会う男(トム)と女(サマー)の生い立ち紹介みたいのがあって、あとは出会って1日目から500日目までの出来事を時系列に沿わず、行ったり来たりしながら見せてく映画。

最初の「パパッと」のところでサマーが「自分の長い黒髪を愛しているがそれを切っても何も感じない」女であることが紹介されて、あーこりゃ並みの男じゃ扱えない種類の女だなーということがわかる。なんかいるよねそういうタイプ。執着してるかと思うとびっくりするほどあっさりそれを手放すタイプ。で、そういう奴がモテるんだよねぇ、男でも女でも。
きっとこれは男が振り回されまくって、あげく振られるパターンの話だな、と。

実際その通りの出来事が 500日の間に起こるんだけど、ひとつひとつのエピソードは割と地味で、サマーも別に悪女ってわけじゃなくて、トムの思い入れが強いぶん大きく振り回されてるって感じ。
エピソードが時間通りに並んでいたら退屈だったかもしれないけど、時間を行ったり来たりするので、トムの気持ちの振れの大きさがよくわかって面白い。
同じ出来事も時間によって違って感じたりと、恋愛は(だけじゃないけど)、俯瞰して見ると思ってもいなかったような形に見えてくるものなんだなぁと思った。

それともうひとつ映画が単調になるのを防いでいたと感じたのがトムの妹のレイチェル。
出番は少ないけど、恋愛に不慣れなトムに何かとアドバイスをしてくれる。妙に世慣れたことを言って面白い。ホントにわかってんのかよーとも思うけどそこがいいんだね。クロエ・グレース・モレッツをちょっと地味にした感じの子だなぁと思って見てたらクロエ・グレース・モレッツだった。
この『(500)日のサマー』が 2009年、『キック・アス』が 2010年の映画だから、ヒットガールになる直前でしょうか。
レイチェルと、トムの二人の(恋愛に不慣れな)友人のおかげで、サマーとの関係がうまくいって甘々な時も嫌味にならず、関係がまずくなっても暗くなりすぎずで良かったと思う。ありがちかもしれないけど、こういう人物配置が大切ってことだね。

サマーに振り回され続けたトム(自分の未熟さもその大きな原因なんだけど)が、最後の 500日目に大きな成長を見せてくれる。人生は続くのだ。
評判のいい映画には気持ちのいいラスト。よかったね、トム。サマーよりオータムの方が絶対いいよ。
トム役はジョセフ・ゴードン・レビット、サマーはゾーイー・デシャネル。監督はマーク・ウェブ。『アメイジング・スパイダーマン』の監督だそうです。

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