日々棒組み696 たかがスキップなんかできなくても死にゃしない

「運動神経悪い芸人」ていうくくりというかキャラクターづけみたいのがあって、別に好きでもないけどたまたまテレビで見かけると笑って見てたりする。
ちょっとわざとらしいのもいて、もうちょっと上手く下手にやれよと思うこともある。基本的にはみんな運動神経が悪いんだろうけど、まぁあの人たちはそれが仕事なので、こちらも見ていて笑うのになんのためらいもない。
似たようなので、少しまえに、あれはアイドルだか女子アナだかなんだかが「スキップができない」をネタにして、彼女なりのスキップをやっているのをテレビでやってたが、それはそれで笑って見ていた。だが、私には、この「スキップができない」というのにはとても苦い思い出がある。

スキップなんて。
できないほうが不思議。そう思うだろう。私もそう思う。
自転車に乗れるまでに苦労したのは覚えていても、スキップが出来るまでに苦労した人はあまりいないだろう。私もそうだ。
でもいるのだ。スキップができない人。
あれは小学3年か4年生の時。
なぜそういうことになったのかは覚えていないが、教室でスキップをすることになった。運動会の出し物とかそういうものの練習の一部だったのかもしれない。
机と椅子を前後に寄せ、教室の真ん中を空け、その対角線をスキップする。
女教師がパンパンパンパンと手拍子するなか、クラスメイトが順番に。

まぁスキップだ。
みんな普通にクリアしてく。
だがそのなかに。
スキップができない女子がひとりいた。
なんだろうあれ。
なんでああなるんだろう。
その子は微妙にリズムがおかしい大またで対角線を渡っていった。
クラスの何人かがそのおかしさに気づく。
2周目。みんながその子に気づく。笑う。私も。女教師も。
3周目。みんな笑う。私も。女教師も。
今思えば本当に申し訳ないが、腹を抱えて笑っていたと思う。女教師も。
スキップだ。
みんなできる。その子以外。
そこで。
女教師はその子にだけスキップすることを命じた。僕らは見てる。
見て。
笑い続ける。僕も。みんなも。女教師も。その子は困ったような顔をして、教室の対角線を行ったり来たりしている。大またで、時々リズムを変えようとしているのがわかるとまた笑いが起きた。
女教師は笑うだけ笑うとその子にスキップを教え始めた。その教え方には「なぜできないの?」というニュアンスがあったような気がする。
その子は終始困り顔で教師の言うことを聞いてスキップしようとしている。何度やってもうまくいかないままだが。

この一件、とてもひどいことをしたと今ならわかる。取り返しのつかないことをしてしまったとさえ思う。

スキップなんて誰でもできる。でもできない人間だっているんだ。今ならわかる。誰でもできることをできない人を見つけたからってえらそーに笑うんじゃない。
その卑しさが今ならわかる。
スキップなんかできなくても死にゃしない。でも、教師とクラスメイトがみんなで自分を笑ったら、死にたくなるほど辛いだろう。

今ならわかるが。
後悔などなんの役にも立たない。

 

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