連続多元冷たい方程式映画『サンシャイン2057』“Sunshine”を観たら

なんか安っぽい映画なのかなぁ、と偏見たっぷりで観はじめたらそんなことはなく、本格SFじゃん、と思って観ていたらなんかそうでもなく、なんでしょうこれ。SFサスペンスと呼べばいいのでしょうか。



太陽が衰え、地球は氷河期のように寒くなり、このままでは人類は滅亡の日を待つばかり。

その太陽に核爆弾を打ち込んでもう少し頑張ってもらいましょう、というミッションに出かけた宇宙船イカロス2号。2号というからには1号があって、イカロス1号は7年前に同じミッションで太陽に向かいましたが消息を絶ち、その原因は不明。

という設定で、イカロス2号が人類のために数々の苦難を乗り越えて行くという物語です。

宇宙船の内外のデザインも(どこかで見たような空気がうっすら漂いますが)良く、重厚な雰囲気で進行します。

衰えた太陽に核爆弾を打ち込んだら元気になるのか私にはわかりませんが、そこはまぁ、映画内でそういうことになってるんだから受け入れることにして、イカロス2号には序盤から次々に問題が降りかかります。

それも、何か船の重要な設備や人の命を犠牲にしないと乗り切れないような問題が。

毎回選択を迫られ、犠牲を強いられ、イカロスは太陽に向かって飛び続けます。

トム・ゴドウィンの短編小説「冷たい方程式」を思い出し、本格SF態勢で観ていましたが、そもそも太陽に向かう宇宙船のネーミングが「イカロス」という時点で、「どっかおかしい」と気づくべきでした。

物理的、精神的問題が次々に起こり、そのたび乗員を失い、ボロボロになってゆくイカロス2号。

科学的に正しいとかは私はジャッジできませんが(それが最優先事項とも思ってないし)、このフィクション内ではなにが起こっていて、解決するために何を犠牲にすべきかわかりやすく描かれていて、それらを理解して選択してゆくその過程に観ているこちらも参加している気持ちになれます。その点では優れた演出がなされていると思いました。

ただし。

(ここからネタバレさせてもらいますね)

ただし。

(ネタバレしますよ。これから観ようと思うならこの先読まないで下さいね)

ただし。

いいですね?

ネタバレしますよ。

ただし。

イカロス1号の船長、ピンバッカーが現れるまで。

イカロス1号のピンバッカー船長がイカロス2号に現れて妨害工作を始めるんです。

え?

そいつはどうやってイカロス2号に乗ったのか、ですって?

知りません。

こっちが聞きたいです。

乗ってたんです!

いつの間にか!

乗るチャンスがあったとしたら、2号が1号の救難信号を受信して、いろいろな思惑を持って1号にドッキングした時だけだと思い見直しましたが、ピンバッカーが乗り込む描写も、それをほのめかす場面も一切ありませんでした。

7年前に太陽に向かって行って行方不明になった宇宙船の船長がいつの間にかイカロス2号に乗ってましたとさ!

しかも全裸で!

全身火傷の体で!

真っ赤っかのズルむけボディで!

なんだそりゃ。

そこいらから映画はわけわかんなくなります。

ピンバッカーがわけわかんないことばかりするので観てる方もわけわかんなくなります。
人間ひとり襟首つかんで高々と持ち上げたりしますピンバッカー。
太陽の力でスーパーパワーを身につけたみたいですピンバッカー。
マーベルコミックかよ。次のアヴェンジャーズに出演かよ。

おかげで他の登場人物もなにやってるのかわかんなくなります。

わけわかんないからその映画はダメかっていうとそんなことはなく、わけわかんなくても観ていて良ければいいんです。私はそう思います。

でもこの映画、前半で「ああ、犠牲を受け入れて使命を果たす物語なんだな」とわかりやすく示しておいてのこの仕打ち。
観客を「いい意味で裏切る」というのとは明らかに違う違和感。
なんなんでしょうこれ。

あまりにわけわかんないので私は考えました。
これさぁ、

1.SF映画のように作ってるけど神話的なメタファーいっぱいでそういう見方をしないと理解できない。

2.本格SF映画を作ろうとしていったん作っちゃったけど、どうにも一本調子で盛り上がらなくて、後からピンバッカーの妨害シチュエーションを追加ででっち上げてくっつけた。

のどっちかじゃないかなぁ。

私は 2 じゃないかとにらんでますが。
選択と犠牲を捧げる行為を経て人類を救った者たちの物語、で通せば地味かもしんないけどSF映画の佳作になったんじゃないかと。
まぁそこを目指したいのか否かってこともありますが。
上映時間の三分の一あたりで船長役の真田広之が犠牲になって姿を消すけど、本来はあそこが映画のクライマックスだったんじゃないかと俺は邪推するね。
ただ、全然つまんないダメ映画とも思えない、なんか気になる映画ではありました。

blinkani

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