日本で言えば『時効警察』(か?)映画『特捜部Q』シリーズを2本観たら

「特捜」とか「Q」とかいう文字を目にすると気になってしょうがない年代なのですが、これはデンマークの刑事映画です。面白かったので続けて観ちゃいました。

特捜部Q 檻の中の女(字幕版)

コペンハーゲン警察殺人課のカールは捜査中に撃たれ休職。一緒に捜査中だった刑事も一人は死亡、もう一人は回復不能の全身麻痺で入院生活となります。
仕事人間のカールは後遺症の残る体で殺人課に復職しようとしますが上司である課長に止められ、未解決時間の資料整理の仕事に回されます。
仕事熱心すぎるカールは一緒に撃たれた二人以外には敬遠されてたみたいです。

本来は、捜査資料を精査し、不備が無いかを確認していく内勤の仕事なのですが(月に何件とかノルマもある)、カールは地下室にこもって仕事するつもりはまったく無く、助手になったアサドと共に、資料におかしなところを見つけた事件の再捜査を始めます。

初めは助手なんかいらないと言っていたカールですが、それまで一日中倉庫でスタンプを押す仕事をして腐っていたアサドが食い下がり、一緒に捜査を進めます。
で、このアサドが有能なやつで、他人の気持ちなどお構いなしに一直線にズカズカ真相に向かっていくカールをうまく補佐して、捜査の助けになります。スタンプ押し(どんな仕事だ?)にさせとくのは勿体無い人材です。

特捜部Qの最初の事件は、女性が船上で行方不明になった事件。自殺じゃないかということでひとまず片付いてるのですが、カールは何かを感じて捜査を始めます。

カールが捜査している場面、実際に事件が起きた場面、事件の原因となったさらに過去の場面が交錯して、事件の真相に近づいていきます。
観客はカールが知らないことも事前に見せられるので、カールの捜査が正しい方に進んでいることがわかります。というか「急げカール!」という気持ちになります。
課長が捜査をやめさせようとする場面では「バカ何言ってんだこのハゲ」という気持ちになります。

何が起きたのかだんだんわかってくるのですが、事件が解決していく高揚感のようなものは味わえません。むしろ真相に近づくほど嫌になっていきます。
たぶんカールも嫌になってると思いますが、大きな瘡蓋をベリベリひっぺがすように捜査を進めていきます。でもそれでも捜査を続けなければいけない理由があることを観客は知っているので、カールのちょっと乱暴な行動も肯定することになります。

未解決事件の再捜査と聞くと日本のドラマ『時効警察』を思い出しますが、「誰にも言いませんよカード」を渡して決着する時効警察と違って、特捜部Qはどこまでもどこまでも犯人を追い詰めます。

カールとアサドがどこまでも追い詰めて、重くて嫌な事件は終結しますが、深い傷も残ります。
陰惨な事件を描く暗い映画ですが、カールがアサドを認めていく過程の描写は、人間味を感じるほっとする場面でした。ちょっとした言葉のやり取りや態度でカールのアサド評が上がっていくのがわかります。ただすごく控えめに、でしたが。

ということで二作目へ。

特捜部Q キジ殺し(字幕版)

特捜部Qは資料整理ではなく未解決事件を解決する部署であることが課長から公に発表されます。前回の事件での功績が世間に認められた結果です。課長が自分の功績みたいな顔してます。

実は『キジ殺し』だけ以前観たことがあったのですが、シリーズものは順番に観るべきですね。この冒頭のシーンからして意味が全然変わってきます。

そんなことになったので、カールに直接未解決事件の再捜査を求める人物が現れます。
後でわかるのですが、この男は元刑事で、寄宿学校に通わせていた双子の兄妹が殺されたという過去を持っていて、犯人も捕まっていたのですが納得できず、退職してからも自分で捜査を進めていた人物でした。
ただ自分だけでは真相にたどり着けず、カールを頼ってきたのでした。

カールは再捜査を断ります。
ところが男はその直後に浴槽で自殺死体となって発見されます。カール宛の捜査資料を残して。
断ったことを後悔したカールはアサドに再捜査開始を告げますが、アサドは犯人が捕まって服役も終えている解決事件だとして乗り気ではありません。

カールとアサドは刑期を終えた犯人を尋ねますが、話に矛盾はなく、再捜査について意見が分かれたまま二人が特捜部の部屋に戻ると、壁一面に寄宿舎双子惨殺事件の捜査資料がきれいに貼られていました。
新秘書ローセが、カールの机の上に置いてあった資料を分類整理したのです。

不機嫌に「やめてくれ」と言ったカールですが、きれいに分類されたおかげで、父である元警部が何を追っていたかがおぼろげに見えてきて、本格的に再捜査開始となります。

例によって捜査中の時間、事件当時の時間、事件よりもう少し前の時間、事件から現在までの時間、の場面が交錯して、例によって嫌な真相に近づいていきます。

「キジ殺し」というのは、キジ狩りのような意味のない残虐な行為のことだそうです。
その通りの嫌な事件でした。

劇中ニコリともしないカール、他人に気遣いができて何ヵ国語かを話せる頼れる相棒アサド、利発な後方支援ローサ、組織内の論理で捜査を止めようとする課長、と娯楽的に面白くなりそうなメンバーが揃いましたが、あまりそっちには引っ張らず、各キャラを強調し過ぎることはなく、観客と一緒に事件の真相に迫っていくように作られているように感じました。
原作小説のあるシリーズなので、原作ではキャラ的な掘り下げ描写が深いかもしれません。それを知らなくても十分楽しめる映画だと思いますが、原作も読んでみたくなりました。

このシリーズ、あと2本映画化されてますが今回はここまで。
面白いけどやっぱり暗くて重いだろうからあんまりね、続けて観るのもね。

*原作最新作はこちら

特捜部Q―アサドの祈り― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

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