コロナ禍の中、ふと気づいたら発売されていました大好きな『奇界遺産』シリーズ第3弾。
『奇界遺産2』から7年ぶりだそうです。
前書きによるとこの7年間は、急変する世界情勢や自然環境のおかげで「今行かなければ次はない」という焦燥感に追い立てられるように世界を飛び回っていたそうです。
ところがこのコロナ禍で今度は行こうにもどこにも行けなくなり、やむなく取材候補の印をつけた世界地図を閉じ、本にまとめる作業に取り掛かったのだそうです。
前2冊では「奇界」の異様さに圧倒されつつ、それでもどこか笑っちゃうような抜けた感じを楽しんでいましたが、その間世界は変わり続け、「奇界」を取り巻く情勢も笑っていられなくなったようです。
「かつてあったこんな奇怪な風景」ではなく、「現存」していることが「奇界」の大事な価値なんだな、とあらためて感じました。「こんなもんが今もこの世界にある」というのが。
半分くらい読み進めたところですが、全2冊では「一奇界四頁」が中心で、時々「一奇界二頁」だったような気がするんですが、今回は「一奇界二頁」が多いように思えます。なるべく多くの「奇界」を収録する方針でしょうか。
頁数とは関係なく、壮大な「奇界」と、小規模な「奇界」とありますが、インドネシアの、泥が吹き出し続けて埋もれ続けている町とか、今も続いているすごい災害なのに全く知りませんでした。でも観光地化されてるそうです。たくましいなぁ。
小規模奇界としてはロシアの猫劇場の話が面白かったです。
猫のサーカスという触れ込みですが、のっけから犬の芸が始まったり、猫が出てきても「猫を絡めた人間の芸」にしか見えないそうです。
そもそも猫というのは芸なんかしないそうで、団長によると、「猫が好きなことを探し当ててそれを芸のように見せるんだ」です。
「奇界」としてはかなり地味な小ネタの部類だと思いますが、なんだか深い言葉ですね。組織で人を使ったり使われたりして苦労している人の精神的な指針になりそうにも思えるし、文学のテーマにもなりそうな気もします。
続きを読むのが楽しみです。
シリーズ1、2も未読の方はぜひどうぞ。