旧作というかオリジナルというかモノクロ版というか、昭和42年(1967年)版の熱くて暑い『日本のいちばん長い日』を観ました。
こちらを観て、新作を観た時に感じた「さっぱり清潔感」の原因がわかりました。
夏の暑さの描写が全然違いました。
新作は、冷房があって当たり前の時代に作られた映画に見えました。旧作の「汗感」を見ればその差は一目瞭然。新作は「暑さ」が記号的にしか表現されてないように思えました。
映画で描かれた当日から22年後、多くはその当日の記憶がある人たちが作った映画が身体に迫ってくるのは当然でしょう。
もうひとつは「血」。映される血液の量が全く違います。『用心棒』かよ、と突っ込みたくなるような、血が噴き出すシーンが何度かあります。
現代では汗や血といったものが嫌われる傾向がありますので、新作ではその露出を控えたのでしょうか。
岡本喜八監督作品。東宝の創立35周年記念映画だからでしょうか超豪華出演陣。阿南陸相役の三船敏郎をはじめ、笠智衆、志村喬、山村聰、黒沢年男、神宮寺大佐、芹沢博士、田所博士、ガス人間第1号、マタンゴ食べちゃった人、モスラと仲良しの人、そしてちょびっと若大将。豪華豪華。
ちなみに『キングコングの逆襲』も東宝の創立35周年記念映画ですが、天本英世は両方に出演してテンションは違いますが、どちらでも「狂気の司令官」的な役を演じています。
豪華出演陣ですが、特に印象に残ったのは畑中少佐を演じた黒沢年男でした。行動が極端なのと、モノクロ画面に目玉がギロギロして怖かったです。目玉ギロギロの顔面に汗の大粒がボツボツ浮いてすごい迫力。こんな人に戦争継続を迫られたらついうなずいちゃいそうだ。新作では松坂桃李が演じていましたが、印象が全く違いました。
印象が違うといえば阿南陸相。三船敏郎の阿南大臣は根っからの軍人で、それが唯一の価値観の人物に見えましたが、役所広司の阿南大臣は家族との関わりが多く描かれ、正反対とまではいきませんが、同じ人物には見えませんでした。栄養補給だけが目的のアリナミンAとお手軽な中にも味を楽しみたいマルちゃん正麺の違いと言ったらわかりやすいでしょうか。わかりにくいですねすいません。
全編通じて昭和天皇は顔が映らないような撮り方になっていますが、いろいろ事情があるのでしょう。それもあってか最後の出演者のクレジットも出演順で俳優の名前が並んでいるだけで、役名は記されていませんでした。新作の昭和天皇の扱いとはだいぶ違っていましたね。
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