日々棒組み774 俺は月に行きたいか?と考えてみた(暇か)

SF少年だったあの頃は「月に行きたいか?」と問われれば、「行きたい」と即答するのがSF少年の義務的反射作用であったが、56歳になった今、「月に行きたいか?」と訊かれたらどうであろう?
私は月に行きたいだろうか?
と考えてみた。誰にもそんなこと訊かれないけどさ。



とりあえずお金の問題考えないで(そこからだと話が進まないからね)、あと有給休暇の残り日数とかも気にしなくていいとして。

仮に好きなだけ休めるとしてもトータルで一週間か、最長二週間のツアーが限界かな。自宅にいるのが好きだからせいぜいそんくらいで。アニメの録画も溜まっちゃうし。
あと訓練的なものも無しでお願いします。歳が歳なんで。
なんかのマシンに縛り付けられてぐるんぐるん回されたり(『プラネテス』で見た)、酸素がだんだん減っていく部屋で細かいプラモデルを組み立てたり(『プラネテス』で見た)、狭い部屋で何日も集団生活したり(『プラネテス』で見た)、テロリストに襲われたり(『プラネテス』で見た)、とかそういうの無しで。
運転免許の更新程度の、ビデオ30分見て終わり、くらいがいいな。ランプが着いたらシートベルトを着用してください、とか、上から酸素マスクが降りてきたら着けてください、とか、チキンとフィッシュとどちらにしますか?とか、そのくらいの。

で、宇宙に出たら地球を見降ろして、
「宇宙から見た地球に国境は無かった。そんなものにこだわって争いを続ける人間とはなんと愚かなんだろう」
とか宇宙から見なくてもわかるようなことを言ってみたい。
月に着いたら、まぁ月面で一泊だな。
あんまりやることなさそうだけどあちこち足跡つけまくって地面にかわいいコックさんの絵とか描いたりして。砂とか石とか拾ってね。おみやげに。

「お持ち帰りはお一人様1kgまで、となっております」
とか添乗員に言われんのね。そんくらいのジップロックの袋もらってマジックで名前書いて。

で、朝は地球の日の出(つーのか?)を見てね。ツアーのみんなで宇宙服着て並んで。体育座りで。
「この宇宙で人間はなんとちっぽけな存在なんだ」とかまたまた地球にいてもわかるじゃん、みたいなことをつぶやいたりしてね。
みんなで地球をバックに記念写真撮って帰路に。

帰りにはすっかり気心の知れたツアー客たち。
「地球に帰ったらみんなでまた集まりましょうよ。そうだ、写真交換会とかしましょうよ」「いいね」「いいね」
みたいな果たされない約束をして無事地球に帰還。

月に行くのはまだ珍しかったこの時代。友人たちがお土産の月の石を見に来る。
「まぁ、石だよね」
なんでもないもののように月の石を友人に手渡す私。
斜め上を見上げながら
「人類なんて…、ちっぽけだよね」
とつぶやくが友人はまったく聞いていない。

そんな月旅行を私はしたい。

 

blinkjitu

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