高校生時代、クラスの友人たちと「宇宙の果てはどうなっているのか?」というビッグクエスチョンが話題になったことがありました。
文系の高校生なりに様々な意見が交わされたのですが、あるひとりだけ、
「宇宙の果てはお花畑である」
と言い出したやつがいて、文系の妄想にしてもさすがにそれはないだろう、とその根拠を問い詰めると、
「俺は見たんだ。キャプテンウルトラの最終回で」
とのこと。
『キャプテンウルトラ』は幼少時私も観ていて、最終回も観たはずなのですが、まったく記憶にありませんでした。
というわけで今回は、いつもの特撮最終回に加えて、「宇宙の果てはどうなっているのか?」というビッグクエスチョンのビッグアンサーを求めて月も火星もはるかに越えてーええー、私と一緒に旅をしようではありませんか。
『キャプテンウルトラ』最終回(第24話)行け!キャプテン宇宙をこえて
キャプテンウルトラamazonプライムビデオ
バックパックの噴射だけで宇宙空間を飛行しているキャプテンウルトラ。
何がおかしいのかニヤリと笑ったところでバックパックの噴射が止まり、ぐるぐる回転しながらなんかどっかに(よくわかんないピンク色の変な塊)に落ちていきます。
床に落ちているキャプテンウルトラ人形。
それを拾い上げるケンジくん。
「だめだなサユリちゃん、また壊れちゃったよ」
「ごめんなさい、キャプテン」
二人の目の前には惑星の模型とその間に張り巡らされた糸が。
どうやらケンジくんとサユリちゃんは、惑星の間を縫ってキャプテンウルトラ人形を飛行させるゲームをしていたようです。
そこへ入って来たのは美少女ミユキ。
妹のようなサユリと違って同年代のミユキにケンジくんはデレデレし始めます。サユリちゃんにもからかわれたりしてます。
サユリが宇宙の模型を指差してケンジに尋ねます。
「ねぇ、ケンジにいちゃん、このほしはなんていうの?」
「それは冥王星。太陽系のいちばんはずれにあるんだ」
「じゃあ、ここからさきはどうなってるの?」
「これから先は銀河系宇宙さ。宇宙はまだまだ続いてるんだ」
「でも、ロケットにのってどんどんどんどんいったら、どこへつくの?」
「えー?…うん、その先も、宇宙さ」
「そこをまた、どんどんどんどんどんどんどんどんいったらどうなるの?」
「どうって…その先も、宇宙だよ。ちょっと、」
透明ボードになにやら描き込むケンジ。
∞
「これなぁに?」
「宇宙はねぇ、無限なんだよ」
「むぅげぇん?」
「そうさ。どこまで行っても終わりが無いんだ。これが無限のマークなんだよ」
「へんなマーク」
というわけで結成された「無限研究会」。
いや、だって突然そういう場面なんだもん。「無限研究会」が結成されてケンジくんが会員の前で会の目的とか演説始めるんだもん。
その会員はケンジくん、サユリちゃん、ミユキちゃん、名もない三人の少年、そして。
「新しくこの会に入会を希望している人がいます」
ドアが開いて現れたのはキャプテンウルトラ、アカネ隊員、ロボットのハックの三者。
人工知能に対して差別意識のある「無限研究会」は、ハックだけに入会テストを課します。
「水星と木星とではどちらが重いか?よぉく考えて答えるんだよ」
まじめなハックは「ホンニョコニョン」と計算して、
「木星の方が重いに決まっているね」
と答えますが、どこまでも意地悪な「無限研究会」の少年たちは声をそろえてこう言います。
「残念でした。木は水に浮きます」
ハックは、
「え?なぁんだ、とんちだったのか」
と頭を抱えますがハック、もしも君がとんちで答えたらこいつらは「ロボットのくせに計算もできないのか。無限研究会は科学を追求する会なんだよ」と君を嗤っただろう。人間なんてしょせんそんなもんさ。
「無限研究会」へのハックの入会が認められたのかはっきりしないまま場面は替わり、その夜。
ケンジとミユキが密かにロケットガリバー号に乗り込みます。
「音をたてちゃいけないよ。ミユキちゃんだけを乗せてあげるんだから」
ケンジくん、なにやってんでしょう。なんか「下心」みたいな言葉が頭に浮かびます。
ガリバー号に乗り込むふたり。灯りをつけると壁に鳩時計が掛かってたり、手作り工作みたいのがくるくる回ってたりと、理解不能な未来のテクノロジー満載です。
それを見たミユキ、
「まぁ、きれい」
未来の美少女の美的感覚も理解不能です。
なぜかそこに潜んでいたサユリも一緒に乗せて発進するガリバー号。
ガリバー号はカブトムシみたいな形で、水色なので、タイムボカンのメカブトンにちょっと似てます。ちょっとです。
ケンジの操縦と案内で宇宙を飛んで行くガリバー号。
ステーションの周りはロケットで混雑するので信号機とかあります。
サユリちゃんは「無限」まで行きたいと言い出しますが、子ども用ロケットのガリバー号では無理なので、ケンジくんの提案で「ちょっと火星まで」行くことにします。
ちょっと火星の近くまでやって来た三人はそこで宇宙遊泳を楽しみます。
宇宙平泳ぎで楽しく泳いでいた三人でしたが、サユリちゃんが浮遊している小惑星に手を触れると、なんかびよよ~んてなってしまいます。
「しまった!トマガキ現象だ!」(そう聴こえた)
ぐるぐる回転するサユリ。やがて命綱もプッツリ切れて飛んで行ってしまいます。
ガリバー号へ戻り、ステーションのキャプテンウルトラに報告するケンジ。
これは自分の責任だとみんなが止めるのも聞かずガリバー号でサユリ探索に向かうケンジ。
「僕は、サユリちゃんの後を追って、宇宙の果てまでも行くんだ!」
テーブルの上を歩いているカブトムシ(オス)。キャプテンが語ります。
「この昆虫には直線という世界しかない。つまり、高さとか広さということは理解できないのだ。そしてこのように壁にぶつかると、どうしてよいかわからなくなり、止まったまま、やがて死んでしまうんだ」
そうか。
カブト虫。
そうか。
壁ぎわでカブトムシが大量死してるのなんて聞いたことないけどキャプテンが言うんだからそうなんだろう。
ケンジたちの救出に向かわずにみんなに話すんだから大事なことなんだろう、カブトムシの習性。
どうやらケンジくんたちは「宇宙の果て」に行ってしまったようです(だってムラトモ博士がそう言ってるんだもん)。
「博士、宇宙の果てまで行く方法が何か無いのですか?」
ハックが訊きます。(ちなみに、そんな話をしている手前でカブトムシはずっともがいてます)
「宇宙の果てまで8000億光年、とても現在の科学では到達不可能だ」
しかし。キャプテンはたったひとつだけ方法を知っていました。
「無限に通ずる近道を通るのです」
「宇宙はつながっている。どこかで切れている。その切れ目から無限に落ちこめる」
しかしそれはとても危険な方法で、今まで試みたものは全て失敗し、命を失っているのでした。
そしてその宇宙の切れ目は銀河系のはずれ、プロメテウス星にあると考えられているのでした。
「博士、どうかやらせてください」
アカネ隊員も懇願します。
博士たちが難しい話をしている間もガリバー号は飛び続け、ある天体に墜落しそうになります。
一方、ケンジたち救出のため新しい宇宙服に身を包み、博士の訓話を聴くキャプテンウルトラ、ハック、アカネ隊員。
「諸君、人類が初めて無限の世界に挑戦するのだ。成功を祈っている」
今まで試みたものは全て命を失っているというさっきの話は、無謀な作戦を思いとどまらせるための嘘だったのだろうか?とにかくキャプテンたちが人類初らしい。
発信するシュピーゲル号。
墜落したガリバー号の中で意識を取り戻すケンジとミユキ。窓から見ると外は真っ暗ですがそこにサユリが浮いています。
「無限ゾーンだ!大変なところに入ってしまった!」
右に左にふわふわするサユリ、それを見失わないように左右に首を振るケンジとミユキ。ふたりにはここで何が起こっているかわからない。見ているこっちにもさっぱりわからない。なにしろ無限ゾーンだ。
プロメテウス星に着陸するシュピーゲル号。地表は全て凍りついている。上陸したキャプテンの宇宙服もたちまち凍りつく。
あまりの寒さでロボットハックがくしゃみをすると大地が揺れ、大きなつららが落ちて来た。プロメテウスは音が500倍に増幅される危険な星なのだ。
探索を続けるキャプテンたちの前に凍りついた怪獣が。
「2000億年前に生存していたプロメザウルスの化石だ。この星では、過去と未来が重なり合っているのだ」
やがて底のない大地の裂け目にたどり着くキャプテンとハック。
突然咆哮をあげるプロメザウルス。500倍に増幅された音で大地が揺れ動き、キャプテンとハックは裂け目に落ちてしまいます。
暗闇を墜落していく途中で出会うキャプテンとガリバー号。
しかしそれもほんの一瞬で、キャプテンは暗闇に消えてしまいます。
「キャプテェェェン!!」
呼びかけるケンジ。
「幻だ!幻を見たんだ!」
もう精神状態がどうにかなってるようです。
ガリバー号の速度計が動いていないことに気づくミユキ。
「しまった!これが行き止まりだったんだ!このまま進めば進むほど抜け出せなくなってしまうんだ!」
止まってるんだか進んでるんだかよくわかりませんが、大変危険な状態だということだけはわかりました。
キャプテンも暗闇で目覚めます。アカネ隊員との通信だけは可能ですが、どうすればいいのかわかりません。ハックがミサイルを撃っても闇に吸い込まれて何の手応えもありません。
「無限ゾーンの入り口にいるらしい。しかし。どうやってここから抜け出したらいいんだ」
ガリバー号ではミユキがケンジに問います。
「私たち、どうなるの?」
「わかんない。燃料が無くなれば墜落してしまうかもしれないんだ」
ケンジの言葉に怖がるミユキ。
ミユキを励まそうとキャプテンウルトラ人形を取り出し(冒頭に出て来て床に落ちて壊れちゃったやつね)、
「ほら、キャプテンがついてるじゃないか!」
人形を見つめるふたり。ケンジが何かに気づきます。
「そうだ。この人形を使って僕たちの最後を宇宙ステーションに知らせよう。もしかすればみんなにも見えるかもしれない」
絶望は人間から正常な判断力を奪ってしまうらしい。もう何を言ってるのかさっぱりわからなくなってきました。
ロケットの天井にキャプテン人形を投げ上げるケンジくん。
普通なら天井にぶつかって落ちてくるところですがここは宇宙。落ちて来ません。
それどころかキャプテン人形はガリバー号の外へ飛びだします。
さらにだけじゃなく、人形は爆発して “ ∞ ” の形の光を発します。
ここでようやく私は気づきました。もうなんでもありなんです。なにしろ宇宙の果てですから。特異点なんですから。
“ ∞ ”の光にハックとキャプテンも気づきます。
「ケンジだ!やっぱりケンジが近くにいるんだ!」
やっぱり!やっぱりなんでもありなんだ!
キャプテンがアカネ隊員に指示を出します。
「この暗黒を抜け出すには1億ルクス以上の明るさが必要だ。方法はひとつだ。2号機3号機をリモートコントロールに切り替え、デースリー作戦開始!」
飛び立つシュピーゲル号。デースリー作戦が始まったのだ。いったいデースリー作戦とは?
分離した2号機3号機が氷壁に体当たりして大爆発、おまけに音が500倍に増幅されたからもう大変。キャプテンたちのいる暗闇も1億ルクスで明るく照らされ、ガリバー号の姿も見えるってもんです。
「あれだ!」
バックパックの噴射で飛び立ちガリバー号に接近するキャプテンウルトラ。笑顔で手を振るケンジとミユキ。やはり笑顔で答えるキャプテンウルトラ。
しかし、その瞬間噴射が止まってしまい、ピンク色の塊に向かって墜落して行くキャプテン。冒頭のシーンと同じことが起こってしまいます。
しかし、そのまま落ちてしまうキャプテンではありません。墜落しながらヘルメットの上のT字形の装置から光線を発射してピンク色を爆破します。
そして…
「サユリちゃん、サユリちゃん、目を開けてごらん」
花の中で眠っているサユリにケンジが呼びかけます。
「ほら、見えるだろう?今までに見たこともない夢の世界が」
目覚めるサユリ。一面の花畑。その中に立っているミユキ、ケンジ、そしてキャプテンたち。
「ケンジにいちゃん、ここはどこ?わたし、どこにいるの?」
「サユリちゃんの行きたがっていた無限に着いたんだよ。ね、キャプテン、ぼくたちは宇宙の壁を超えたんですね」
「ケンジ、無限の壁を超えたと言っても我々はほんの入り口にいるに過ぎないんだ。人類の宇宙開拓はまだまだ続くんだ」
超えたんだか入り口なんだかわからないが、人類は壁際のカブトムシみたいに死んだりしないのだ。
「キャプテンウルトラに休みは無い」振り向いたケンジがおどけて言う。「ゆけ、キャプテン。この宇宙の果てに第2の地球を築くのだ(博士の声になってる)」
「はっ!」
笑いながらお花畑を駆けてゆくケンジとミユキ。後を追って駆け始めるキャプテンとアカネ隊員、さらにハックとサユリ。
笑顔でお花畑を駆けて行く五人と一体のロボット。あっちの空には虹がかかっている。
宇宙の果てのお花畑でみんな幸せそうだ。さすがキャプテンウルトラだ。
[終]
なんていうかあの。
救出に行った人たちもいっしょに遭難しちゃいました、って話のような気がするんですが、気のせいでしょうか。みんなで笑ってっけど。
度を越してポジティブな人たちが集まってるのか、幼いサユリちゃんが怖がらないように気を使ってるのか、はたまた花から幸せになるガスでも出てるのかわかりませんが、私にはこの人たちの明るい未来を想像することができません。
劇中キャプテンウルトラのことをみんなが「キャプテンキャプテン」と呼ぶので、ひょっとしたら「キャプテンウルトラ」が本名で、未来のキラキラネームなのかな?と思いましたが、調べたらキャプテンウルトラの本名は「本郷武彦」さんだそうです。ショッカーに改造されちゃいそうな名前ですね。
冒頭の話に戻りますが、「宇宙の果てはお花畑」と言い張ってた高校のクラスメイトは、アニメ『機動戦士ガンダム』で、アムロとララァがお花畑を走るイメージシーンを見て「あれは宇宙の果てでニュータイプが出会うシーンなんだ」と解釈してました。
『キャプテンウルトラ』の放送は1967年なので、私やクラスメイトが4~5歳のころ。子供番組ってなんか「責任」みたいのがあるよなぁ、と思いました。
結びに、お花畑って、宇宙の果てっていうより私には「あの世」のイメージに思えてしょうがない、ということを申し添えてシリーズ特撮最終回第14回をお開きとさせていただきます。