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解説付再録:シルバーボディの憎い奴 (AIBOじゃないよ) 2001.1.13

 西暦2000年のある日。

近所のスーパーで買物をしている時、ある物が私の心を捕らえた。 70年代の歌謡曲をBGMにしているその店で、私は以前、子門真人の歌う「スターウォーズ」のテーマを聞いたことがあり、内心あなどれない物を感じていた。

 その日も「木綿のハンカチーフ」とか、「年下の男の子」とかが、かかっていたと思われるが、「奴」を目にした瞬間、なつかしい歌も耳に入らなくなった。 「ポケモン」「ウルトラマン」「仮面ライダー」など、誰でも知っているキャラクターのおもちゃ付きお菓子が陳列されているかたわらに、見たことも聞いたこともないキャラクターのおもちゃコーナーがあり、そこにキングのように奴はいた。最近流行りのブリスターパック(中身が見えるやつね)の中でシルバーボディを輝かせて。

カラーこそ例の犬っコロ型のロボとそっくりだが、スタイルは誇り高きゴリラのそれであった。 身長約15cmのゴリラ型ロボ。 しかし見た目より何より私の心を捕らえたのはその名称であった。 パッケージにはこう明記されていた。「メカッチョゴリラ」

「メカッチョ…ゴリラ」口元をへらへらゆるませてつぶやいてみた。 パッケージの説明によると、単三電池2本を使用し、腕をグルグル回して進み、転んでも立ち上がり、目が光り、おまけに右手のフックで色々面白い動きをするよ、との事だった。 見ると、中国製の花火のような怪しい外見の単三電池も2本ちゃんと入っている。(そもそもメカッチョゴリラ自体MADE IN Chinaだが)

値段は五百円。欲しい。 しかし我が家には、買物のついでに買うおもちゃは三百円までという暗黙の了解がある。

大人なんだから自分の財布から出して買えばいいじゃないかと思うかもしれないが、こういうことはそういうことじゃないのだ。 せこいルールを守る楽しさというものがあるのだ。世の中には。 というわけでその時は買わずに帰った。

しかし、その後もそのスーパーへいくたびメカッチョゴリラを確認して「欲しい」という気持ちをつのらせていった。 そんな日々が2ヵ月も続いただろうか。 そして結局買ってしまった。というか、妻が買って来た。というか、そう仕向けた。

とにかく、とうとうメカッチョゴリラが我が家へやって来た。

メカッチョゴリラ:前

メカッチョゴリラ:前

横

横(右手にフックが確認できる)

ue

けつ(シッポも動くのだ!)

息子と私とで引きむしるようにパッケージを開け、背中に電池をぶち込みスイッチオン。2秒後に大爆笑。 基本動作は、足より長い腕を七回転させて前進、3秒間目が光る、という繰り返しなのだが、何しろその腕の回転が速いのだ。 五秒間で七回転もするものだからせわしないったらありゃしない。(0.7秒に1回転だよ)

コタツの上で動かしていたのだが、後ろに倒してみたら電池が重くて立ち上がれず、狂ったように腕をブン回して、カップ麺を蹴散らし、あっという間に転落、笑い死にそうな息子がスイッチを切るまで、床の上を狂ったように暴れ回っていた。 右手のフックを出すとさらに不規則な動きになる。まるでバカだ。 ああ、こんなに面白い物、どうしてもっと早く買わなかったんだろう。

その日からメカッチョと我々家族の生活が始まった。

私たちは辛い事、悲しい事があると、(あんまりないけど)メカッチョのスイッチを入れるようになった。

会社でいやな上司にからまれた日は、(あんまりないけど)メカッチョが転がり回る姿を見て笑い飛ばした。

私は思う。メカッチョのように生きたい。周りの状況などおかまいなしに腕をブン回すメカッチョのように。 そしていつか中国のどこかにあるメカッチョゴリラ製造工場に行ってみたい。

ベルトコンベアの上を組立てられながら流れて行く何千何万体のメカッチョゴリラ。 製品の最終チェックで転んでは立ち上がる何千何万体のメカッチョゴリラ。 それを見つめる中国美人のつぶらな瞳。 想像しただけでドキドキする。夢と希望を胸に人生を送れそうな気になる。

犬っコロのロボで癒されるのは20世紀までにしようじゃないか。 21世紀はメカッチョゴリラの鉄腕大回転で、不景気や暗い世相を吹っ飛ばし、新しい時代を切り拓いて行こうじゃないか。

2015年の解説

「オトーラの書」初期の人気者「メカッチョゴリラ」です。返す返すも残念なのは、メカッチョゴリラが作動している状態を動画に残さなかったことです。
当時はCASIOの20万画素のデジカメをやっと買って喜んで使っていましたが、もちろん動画など撮れるわけもなく、当然、静止画像での紹介でした。タイトルに(AIBOじゃないよ)とか入れてますが、まぁそんな時代だったよ、と。
静止画像で一生懸命メカッチョゴリラの変な動きを伝えようとしたのが下の写真です。当時「メカッチョゴリラ大進撃」というタイトルでアップしてます。

周りに障害物(ブロックなど)を配置してスイッチオン!

周りに障害物(ブロックなど)を配置してスイッチオン!

 

2秒後 うりゃうりゃ~!

2秒後
うりゃうりゃ~!

10秒後 うりゃうりゃうりゃうりゃ~!!

10秒後
うりゃうりゃうりゃうりゃ~!!

 

me33

15秒後
うりゃうりゃうりゃうりゃうり…… どこに?

動くメカッチョゴリラの勇姿を後世に残さなくてはと思ったのは、動画も撮れるデジカメを手に入れてからだいぶ経ってからでした。
これで撮影できると、息子の、ほとんど使わなくなったおもちゃを放り込んでいる箱の底からメカッチョゴリラを掘り出し、カメラをセットしてスイッチを入れたが、びくとも動かず、電池を入れ替えてみても再起動は果たせず、分解したらどこかちょちょっと治せるんじゃないかとバラしてみたけどどこが悪いのか全く分からず、もうしょうがないと、バラバラになったメカッチョゴリラを撮影して「さらばメカッチョゴリラ」としてせめてもう一花咲かせようと目論んだが、なんだかそれも手付かずのままになってしまった。もうそのメカッチョバラバラ写真もどこにあるのやらのていたらく。
すまんメカッチョゴリラ。すべて私の怠慢だ。
せめて最後にお前の一番かっこいい写真を載せて、お詫びのしるしとしたい。
ありがとうメカッチョゴリラ。そして、
さようならメカッチョゴリラ。

gyaku

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