ネタバレ注意。映画『正体』を観たら

というわけで。『正体』映画版鑑賞しました。「読んでから観る派」なので。
読んでも観ない場合もありますが。
*重大な内容に触れますのでご注意ください。

映画『正体』

原作が文庫で600ページ余りの長編なのに対して映画の上映時間は2時間。どこをどうして2時間に収めるのか?という興味も持ちながらの鑑賞でした。
原作では、脱獄した死刑囚鏑木慶一が逃亡しながら他人と関わっていく様子を鏑木の内面に触れずに、関わった側の内面の変化で丹念に描いて、読者もそれで鏑木の「正体」をあれこれ想像する、という構成になっていましたが、2時間ではそんな贅沢なことはやってられません。他に描かなきゃならないこともあるので。

とはいえ。
何人かとは関わらなくては『正体』ではなくなっちゃいます。関わる人が変わるたびに別人になってるってところがキモですからね。
というわけで映画版では関わる人を絞ってきました。被害者遺族を除くと三人(三人半か?)。
最低限かな、とも思いますが、ひとりひとりに取れる時間は限られてしまうので、それぞれが鏑木に惹かれていく様子は不十分に思えました。

それらを補うためでしょうか、映画は細かく時間を前後させた短いシーンをちょいちょい差し込んでましたが、ちょっとわかりにくくなっちゃってたかな。
他に原作と違うな、と思ったのは追跡する警察側にも情の通う人物を配置したことでしょうか。「逃亡者と追跡者」ものの緊張感は強くなっていたと思いました。
まぁ一番原作と違っていたのは結末ですが。そこ変えるか、みたいな大きな変更。原作読んだ時は「そうしちゃうか」と思いましたが。
その昔、平井和正が自作の人気キャラを殺した時に読者から「なぜ殺したんだ」と抗議され、そのキャラが死ななかったバージョンを「お前らこんなの読みたかったのか?」と実際に書いて見せたのを思い出します。いくら人気キャラでも死ぬべき者が死ぬべき時に死なないと物語が死んじゃうんだと。
映画と原作が同じじゃなきゃいけないなんて全然思いませんが、私はこの結末の変更でなんかふにゃふにゃしちゃったように感じました。物語が情に流されたみたいな。
でも映画の結末としてはこっちの方がバランスがいいんだろうなぁとも思いました。

全4話でじっくり描かれた⻲梨和也主演のドラマ版はこちらで観られます →連続ドラマW 正体
(「ドラマW」の「W」はWOWOWの「W」です)

原作小説はこちら →正体 (光文社文庫) Kindle版
原作長いけどエピソードがはっきり分かれていて読みやすいですよ。

blinksaba
blinksaba

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