邪悪なものが弱者に目をつけてどこまでも追っかけてくる1955年のアメリカ映画。
90分くらいの映画ですが、いろんなものが詰まってます。
銀行強盗をした父親から大金1万ドルを預けられた幼い兄妹がそれを守るために死ぬほど怖い目にあいます。
父はすぐに絞首刑になりますが、刑務所で大金の存在を知られてしまいます。ロバート・ミッチャム演じる連続殺人鬼に。
釈放されたミッチャムは伝道師を名乗り兄妹の母に近づき、近所の世話焼きおばさんのおせっかいもあり、母とミッチャムは結婚してしまいます。
兄のジョンだけはミッチャムを疑い心を開きませんが、母や近所のおばさんは完全に信じてしまいます。母親なんかもう崇拝の域です。我が子に盗んだ金を預ける父も父なら、あっという間にだまされ言いなりになる母も母です。バカ夫婦が幼い兄妹に災厄を招いた物語と言えるでしょう。
幼い妹はなにもわからなくてミッチャムの言うことにも兄の言うことにも従いますが、お金の隠し場所だけはしゃべりません。
後半兄妹とミッチャムの追っかけになりますが、怖い怖い。
途中、馬に乗ったミッチャムが朝焼けを背に、「主を頼れ」と歌いながらふたりが隠れている納屋に向かってくるシーンが、不気味に美しくて印象に残りました。
その後兄妹は、身寄りのない子供をあずかっている厳格なおばさんの保護下に入りますが、おばさんも偽伝道師と同じような言葉(宗教的な)を使うので、ジョンは馴染めないものを感じます。
それでも平穏な居場所を見つけたかにみえた兄妹でしたが、ミッチャムは諦めずに迫ってきます。
ついに兄妹と厳格おばさんを追い詰めたミッチャムでしたが、そこでも歌います。「主を頼れ」といういつもの歌ですが、ミッチャムと一緒に厳格おばさんも同じ歌をいっしょに歌い始めます。ちょっとびっくりしましたが、何か意図があるのでしょう。言葉は同じでも行動は正反対だよ、みたいな。
最後の方で、近所の人のいいおせっかいおばさんだった人が恐ろしい形相で登場します。自分がまんまとだまされていたことへの怒りでしょうか、もう別人。怖い怖い。
厳格おばさん以外の女性は老いも若きも愚かで浅はか、男は悪人か意気地なし(兄ジョン以外)に見えました。周囲に頼りになる者が誰もいないっていうのはサスペンスの基本でしょうか。ミッチャムは「主を頼れ」としきりに歌い続けますが。
番組紹介の「ロバート・ミッチャムの怪演が光る」という言葉に惹かれて録画しましたが、それ以外にも見所満載で、サスペンスもののフォーマットが詰まってる映画だと思いました。
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