娘の夏休み課題図書を読んじゃうシリーズ第2弾。
死んだ人も昔は生きていました、生きてる人も昔から生きていました、知らない人も昔生きていました、中学2年生の女の子が時間をさかのぼってそれを知り、関わるお話。
むりやりまとめるとこんなところでしょうか。
死んだ祖父が晩年ひとりで住んでいた家。やがて取り壊されるその家は、主人公の死んだ母が生まれ育った家であり、祖父が育った家であり、謎のおばばも住んでいた家でした。
主人公は時をさかのぼり、それらを自分の目で見、できごとに少しずつ関わっっていきます。
はじめは、住むひとを失い終わってゆく寂しさを漂わせている家が、過去のできごとが語られるにつれ、生きて、その中にいくつもの「命」を包含し、育て、膨らませたものであることがわかってきます。まるで蓮の果托のように。
ひとの心情の描写も細やかですが、家や植物の描写も細やかでゆきとどいた美術のようです。蓮の花が開くときの匂いなんか知りませんが確かに嗅いだような気持ちになりました。
時間をさかのぼるファンタジー的なしかけも、それで生じる記憶のずれとかパラドックス的結末が少しずつ見えてくるところとか気持ちよく読めましたが、最後に語られる通常の時間の流れでの祖父との思い出が感情的にはクライマックスで、少し泣きそうになりました。
*amazonのレビューには詳しく内容に触れたものもありますのでこれから読もうという方はご注意を。読まずに感想文を書こうという方は参考にするといいかも(あくまで「参考」で)。
夏の朝 (福音館創作童話シリーズ)
本田 昌子 木村 彩子
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