人類に勝ち目なし。『ウィリアム・ギブスン エイリアン3』を読んだら

こちら、ウィリアム・ギブスンが『エイリアン2』の続編映画『エイリアン3』のために書いた脚本(結果的に没)を基に別の作家パット・カディガンが小説化したものになります。
なので『ウィリアム・ギブスン エイリアン3』というのが書名で、著者はギブスンとカディガンということになりましょうか。

『ウィリアム・ギブスン エイリアン3』

惑星LV426を脱出して漂流していた宇宙船スラコは、共産主義勢力の支配宙域に侵入してしまいます。
スラコに乗り込んだ宇宙共産主義者たちによって冷凍睡眠中のリプリー、ニュート、ヒックス、ビショップ(上半身)が発見されます。
でもそこに乗っていたのは人間や合成人間(シンセティックと呼ばれています)だけではありませんでした。
そうです。やつら、エイリアンの一味も密航していたのです。ある形で。

というわけでこの世界、資本主義と共産主義、ふたつの勢力で冷戦状態になっていて、それが災厄を広げるひとつの原因になっています。
さらにおなじみ、資本主義陣営で支配的な力を持った企業、ウェイランド・ユタニの思惑も状況を悪くしてゆきます。

ただ、物語の中でエイリアンは進化・適応を繰り返して、本当に厄介な化け物になってゆくので、人間同士の対立だの強欲だのとは関係なく「もう人類は勝てねんじゃね?」という展開になります。
『エイリアン2』でリプリーが「一匹でも地球に来たら人類はおしまいだ」みたいなことを言いますが、ここまでの進化を見ると一匹、いや、ちょっぴりの体液でもおしまいですね、人類は。

というように、新しい要素もありつつ大きな世界観を見せつつの、ではありますが。
リプリーがほぼ登場せず(シガーニー・ウィーバーが出演しないというのが当初の条件だったそうです)、ヒックス伍長とビショップが活躍するという大きな違いはありますが。
前半の人間由来のごたごたがひと段落するとその後は『エイリアン2』で観たような感じでお話が進みます。
出てくる銃で殺す酸で溶ける出てくる銃で殺す酸で溶ける出てくる銃で殺す酸で溶ける狭いとこ逃げる出てくる銃で殺す酸で溶けるなんか時間が無い出てくる銃で殺す酸で溶けるビショップ単独行動出てくる銃で殺す酸で溶ける出てくる銃で殺す酸で溶ける危ないとこでビショップ登場脱出大爆発

といったところでしょうか。
そこここ『エイリアン2』みたいだなぁと思いながら読んでいましたが、終盤はなかなかハラハラドキドキしました。
あと、小説だけあってビショップの構造というか細かい仕組み、何かを判断する時の内面の葛藤(合成人間なりの心の動き)が描写されていて、SF感があって良かったです。
『エイリアン2』の登場人物の回想も頻繁に折り込まれ、『エイリアン2』好きな人には楽しめるのではないでしょうか。

訳者あとがきを読むと、映画として完成した『エイリアン3』が不評だったようで、その反動もあって後に公開されたギブスン版『エイリアン3』がさまざまな企画として浮上したそうです。
『2』で熱狂した人にとっては「これでいいんだよ!こういうのが観たかったんだよ!」って感じでしょうか。
一作目と二作目の大胆な差別化が大成功したので、製作側としては『3』にも大きな差別化を求めたようですが、一作目と二作目のかけ離れた長い線上に無いようなものとなるとなかなか難しいですよね。
こじらせた結果が映画『エイリアン3』だったのでしょう。

『エイリアン3』の脚本のゴタゴタは『あなたの知らない怪獣マル秘大百科』というムックの「『エイリアン3』シナリオ合戦(品川四郎)」に詳しく書かれています。ギブスン版の後にもなかなかな紆余曲折があったようで、没脚本もダイナミックなストーリーだったりして、これはこれで観てみたいなぁというものでした。

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