それは包帯のような嘘。朝井リョウ『何者』を読んだら

ここんとこ、無敵の化け物が宇宙で大暴れとか、復讐のために女性を何年も減圧タンクに監禁するとか、味の濃い本ばかり読んでいましたが、今回は繊細な青春小説です。

刊行時、新聞の書評を読んで面白そうだなと思ったけど読まないままにしていましたがやっと読みました。
2012年刊行ということなのであれから10年。還暦を迎えた私が就活に悩む大学生の話を読んでどうなるんだ、と思いましたが、考えてみたら娘がまさに就活期を迎えるのでそれを踏まえて読むことにしました。
ところがこの還暦爺さんの枯れ果てた魂にもブスブス突き刺ささってきました。

朝井リョウ『何者』

就活期を迎えた大学生のそれぞれの就職活動のあれこれのお話です。
主人公拓人とそのルームメイト光太郎、その元カノ瑞月、拓人たちの上階で同棲している理香と隆良の4人がそれぞれのやり方で就職活動しています。
やり方は4人それぞれで、隆良は「みんなで一斉に就活なんて、けっ」という態度でいますが実は普通に就活してました。ちょっとカッコ悪いです。でもなんかわかります。

4人は皆TwitterやFacebookといったSNSを使っていて、日々の自分の行動をこまめに投稿していて、お互いの投稿も見ています。
頻繁に会って話すこととSNSを閲覧して相手の人物像を捉えているようです。SNS(で飾っている理想)と現実のズレとかも容赦なく見えてしまいます(見てしまいます)。

読んでいて、中島みゆきの歌にある「包帯のような嘘」というフレーズを思い出しました。
初めは「気取ってカッコつけたツイートばかりしてカッコわりーなー」と思っていたものも、終盤ベリベリと包帯が剥がされるような展開になると「やめてやれーそれは剥がさないでやってくれー」と思うようになりました。
たとえ相手が気に入らない奴でも「包帯のような嘘」をベリベリ剥がすのは非人道的なんだな、と思いました。ネット上であれリアルであれ。

就活特有の矛盾や悩みが積み重なるように話は進んでいきますが、そこから滲み出てくるものは就活特有なものだけでなく、そして若い人特有なものでもなく、おそらく人生通じてついて回るものなんじゃないかと思いました。

というわけで繊細にも程があるような小説だったので次はこれ読み始めました。
これ『特捜部Q 吊るされた少女』。シリーズ6作目。

大丈夫でしょうか少女、吊るされちゃって。
と思ったらいきなり死んでました少女。

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