映画の手法みたいなものはよく知らなくて、そういうことを気にしながら観ることはほとんどない。特撮映画の技術の話とかは好きだけど、観ている時はやっぱりそういうことは何も考えずに観ている。
とはいえ、「相米慎二監督といえば長回しである」とどこかで読んだのは覚えていて、今回鑑賞した『ションベンライダー』の冒頭も長い長い長回し。
体操してるヤクザ者とその弟分のチンピラ→中学校のプール→バイクが走り回る校庭→校門内側→校門前道路→校門横の壁に手書きされた映画タイトル『ションベンライダー』。ここまで8分くらい。
普段映画の手法は意識しない私だが、ここは意識して観たほうが面白い。
チンピラからプールに移動していくのに学校の塀を乗り越えるように画面が動いていて、私の頭の中ではカメラマンがカメラを担いで撮影しながら塀を乗り越える場面が浮かんでいたが、もちろんそんなことはなくて、クレーンを使っての撮影だったそうだ。そりゃそうだ。
冒頭の8分間に人物のアップは無くて、登場する人物はほとんど顔がわからない。ヤクザ者とチンピラがいくらか大きめに映るくらい。中学生トリオはほとんど顔が判別できない。このあたりテレビでなく映画館で観たらどんな印象だったかちょっと気になった。
長回しは、視点が移動する際、移動先の「音」で画面を引っ張るんだなということもちょっと思った。チンピラが歩いている場面でプール内の音が、プール内の出来事が映っている時に校庭のバイクの音とそれを止める教師の声が聞こえて来る。きっとそうやってつなげていくんだな。これからは他の映画を観る時も気にしてみよう。
ストーリー的には、「太ってる」ってだけで間違えて誘拐されちゃうって発端から、もう「この映画はハチャメチャですよ」と宣言していて、ラストまでその通りハチャメチャに進行していく。もうわけわかんない。誘拐されたデブに復讐するために救出しに行くって主人公中学生トリオの動機もよくわかんない。けどわけわかんないままただ観るのがいいんだろうなこの場合。
銭湯のシーンで河合美智子がやっとそれなりの大きさで映るけどそれに見とれてるいると貴重なデブナガ情報を聞き逃してしまう。劇中の男子ふたりと同じように。こういうとこ面白いね。ごじゅーすぎてチュー学生と同じかよ、俺は、みたいな。
物語の終盤では三人が服を交換したりして、誰が誰だかわからなくなる。登場人物を記号として扱いたいのかそういう造りのものを茶化してるのか、何か意図があるのか特にないのか、見てる方は戸惑うばかり。
財津一郎(タケモトピアノのCMで頻繁に見かけるけど、あれも作られたのはずいぶん前だよね)が、すごく濃いキャラで出演してるけど、むしろ他の人物より映画っぽくてしっくり自然に見える。不思議。
これ1983年の映画で同時上映は『うる星やつら オンリー・ユー』(押井守監督)だったそうです。だから自由に作れたのかなぁ。
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