あの頃の僕らの心の支えだった伝説のSF雑誌「月刊スターログ日本版」。私の手元にある中から行き当たりばったりに選んだ一冊をゆるやかに語るコーナー第11弾。
月刊スターログ日本版NO.54:1983年4月号 特別定価680円
巻頭のピンナップは表のカラーがシド・ミード画の「フーチャー・カー」未来の自動車ですね。これ『ブレードランナー』に出てたやつ(たぶん)。で、裏のモノクロはそのイラストのラフ画。見比べると面白いですね。形の取り方とかうっすらわかる。うっすらですけど。
そのころ『魔宮の伝説』は『死の寺』だった
『スターウォーズ ジェダイの復讐』の記事の中にルーカス関連ということでしょう、インディ・ジョーンズシリーズの2作目(記事では「レイダースの2作目」と記されてますが)の仮タイトルが “Indiana Jones and the Temple of Death” であることが伝えられています。「インディアナ・ジョーンズと死の寺」と訳されてます。しのてら。
公開時の原題は “INDIANA JONES and the TEMPLE of DOOM” でしたから、“Death” が “DOOM” に変更になってます。“DOOM”?google翻訳だと「運命」とか「逝去」とかいう意味があるみたいです。「インディアナ・ジョーンズと運命の寺」、もしくは「逝去の寺」。邦題はご存知の通り『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。「逝去の寺」だとなんか渋い邦画みたいですよね。大滝秀治とか出てそう。
そのころ村上龍は『だいじょうぶマイフレンド』について「元気なほうがいい」と語っていた
映画『だいじょうぶマイフレンド』完成の記事とともに監督・脚本の村上龍のミニ・インタビューも載ってます。ホントにミニ。
『だいじょうぶマイフレンド』のメッセージは?という質問に、
「作品を見てもらえばわかるけど、やっぱり元気なほうがいいってことかな」
と答えてます。
ちなみに『だいじょうぶマイフレンド』は村上監督の映画第2作目。
実は今、村上龍の『すべての男は消耗品である。VOL.1〜VOL.13:1984年8月〜2013年9月』という恐ろしいボリュームのエッセイを電子書籍で読んでいて、やっと85パーセント読み終わったところなのですが、その後に作った映画の話もちょいちょい出てきます。映画公開時にはたくさん取材を受けるけど、何を言ったかあまり覚えてないらしいです。
私は『だいじょうぶマイフレンド』は未見で、小説版も読んでませんが、この記事を書くために検索したら、散々な記述ばかりでした。逆に観たくなるレベル。こういう評価が散々な映画こそamazonプライムビデオで配信してもらいたいなぁ。洋画は(どこの国の映画かわからないのも含み)、字幕も無い怪しい映画はいっぱいあるんですよねぇ、amazonプライムビデオ。邦画も是非怪しいシリーズを!
そのころファンタジーは『ダーク・クリスタル』“THE DARK CRYSTAL” だった
こちらは傑作映画。しかも今ならamazonプライムビデオで観られます。DVD持ってるけど、吹き替えの入ってるBlu-rayも買いたなーと思う今日このごろ。
特集は全11ページで、写真満載、世界観の説明から、監督、プロヂューサーらのスタッフインタビュー(Jim Henson、Gary Kurtz、Jean Pierre Amiel)、コンセプチュアル・デザイナー ブライアン・フロウド “Brian Froud” の紹介もある。
さらに、試写を観た宮崎駿、山岸凉子、高橋葉介の座談会。これも豪華。映画全体としては高評価ですが、主人公の少年の行動には多々ご不満があるようで(行動の動機がはっきりしないとか、クライマックスもモタモタして女の子に見せ場をゆずってるとか)、物語を作る立場からの発言が興味深いです。
三人とも座談会の記事のためにイラストを描いていて、宮崎駿は鼻眼鏡を架けているキャラクターを描いて「このメガネだれが検眼するのだろう?」と書き添えています。そういうとこ気になるんだなって思ったのを覚えてます。
この時宮崎駿は “『風の谷のナウシカ』を連載中の ” と紹介されています。映画『風の谷のナウシカ』は1984年の作品なのでこの座談会の翌年ですね。山岸凉子も “『日出処の天子』連載中の ” という紹介です。
そのころ出版はこんなだった
この号で新刊(ほぼ新刊)として紹介されている書籍は以下のとおり
・『キマイラ朧変』夢枕獏
・『あなたの魂に安らぎあれ』神林長平
・『夢魔のふる夜』水見稜
・『銀河乞食軍団(3)銀河の謀略トンネル』野田昌宏
・『銀河ヒッチハイク・ガイド』ダグラス・アダムス
などでした。
そのころオトーはMetal kong で、熊谷に住んで投稿していた
ふっふっふっ。ついにこの号が出てきてしまったぜ。
この号。
私の読者投稿が載ってる号。
恥ずかしいけどしかたない。
この企画を始めた当初はすっかり忘れていたが、#3を書いてるころに投稿が載ったことがあるのを思い出して、どうしよう、と。出てきたらどうしようその号が。と悩んでいたが、しかたない。その時は恥をしのんで公開しよう、と。正直に恥を晒そうと決意して、死刑囚のように「その時」を静かに待つ日々なのでした。
恥ずかしいけどお見せします。
Metal kongというのがスターログに投稿する時に使っていたペンネームです。かっこいいと思ってたんですね。文章もちょっとなんだかです。
住所が埼玉県熊谷市になっているから大学1年か2年の時ですね。
あの熊谷。暑くて有名だけどそれだけじゃなくて、ちょうどいい気候が無くて、昨日まで暑かったと思ったら今日は寒くてしょうがない、みたいな。夏と冬しかないと言われていました。
この投稿では野田昌宏さんにいちゃもんつけてますね。もちろん冗談ですが、バカな大学生です。
この件には後日談があって、投稿が載ってまもない頃、本のところでも紹介した『銀河乞食軍団』を読んでいてふと気づいたのです。物語に出てくる銀河乞食軍団の頭目の名前がジェリコ・ムックホッファだということに。
ジェリコ・ムックホッファ!
ムック!ホッファ!
『銀河乞食軍団』はSFマガジンの増刊号に載った時から読んでいたのに気づかなかったとは、あまりにボンクラすぎる。きっと熊谷の暑さのせいでしょう。
というわけで私は野田氏にお手紙を書きました。
スターログにこんな投稿をして載ってしまったが、ムックホッファに気がつかないとは迂闊すぎる。ご無礼をお許しください、みたいな内容で。
するとしばらくして野田氏から郵便物が届きました(会社名義だったかもしれません)。
中には『ひらけ!ポンキッキ』のノベルティでしょうか、ガチャピンとムックのイラストが印刷されたマグカップと、プラスチック製のバッジが入っていたのでした。
いちゃもんつけた(冗談だけどさ)お詫びをしたかったのにかえって気を使わせてしまった。好きな作家と交流ができたうれしさと、おとなの身の振り方みたいのを同時に感じたボンクラ大学生でした。
今回その時送ってもらった品をお見せできればよかったのですが、マグカップはたしか割ってしまって、プラスチックのバッジは見当たりませんでした。ホントにダメな私です。
個人的な思い出話につきあわせてごめんなさいとお詫びしつつ、「オトーは月刊スターログと」#11 はここまで。次回#12までごきげんようさようなら!熱中症に気をつけろよ!水分取れよ!こまめにな!