それは日曜日の朝のこと。
二階から降りてきたアヤがうわ言のようにつぶやいている。
「とーらぶやばーとーらぶやばー」
は?
な?
インド人の呪文か?
「とーらぶまじやばいよー」
お?
え?
あ?
あ!
あーそうか。とーらぶね、とーらぶ。
我が家の録画係である私には、新番組の季節になるとアニメ好きの妻子から、
「今期はこれとこれとこれを録画すべし」
という指令がLINEで投げられる。
その中にあったのだ。とーらぶ。刀剣乱舞が。
正確には『活劇 刀剣乱舞』というタイトルのアニメ。
もともとはゲームらしいけど、アヤさんはずっとアニメのファン。いわゆる「推し」もいるようだ。夜中の放送なので、録画したのを見たのだろう。
「もう見たの?」
「うん。まじやべとーらぶまじやべおしとかじゃなくてまじやばいよ」
娘のボキャブラリーがまじ貧困なのはともかく、正常に録画されていたようでホッと胸をなでおろす。
最近の録画機器は優秀で、多少の時間移動は追っかけて録画してくれるのだが、ごくごくまれに録画されない時がある。
プロ録画係たるもの、100パーセントの録画成功率をもって当然とすべきだが、なかなかそこまで至らない。
そして、プロの失敗には家族も厳しい。
以前、会社を辞め失業したことを告げた時も「あ、そう。ふーん」みたいな態度だった妻も、録画失敗を知ると「ウソ!まじ!?信じらんな〜い」だ。
失業した私を暖かく包んでくれた家族も、アニメ録画の失敗には冷たい。そりゃもう濡れた毛布のように冷たい。
私は録画の失敗をフォローできるように、地デジとBSの両方で放送している場合は放送日の早い方で録画して、それが失敗していたら次の放送で録画できるように備えているのだ。
そこまでしているのに。
そこまでしているのにやつらときたら。やつらときたらやつらときたら。
そんなわけでアニメ『活劇 刀剣乱舞』第1話を(再見の)アヤといっしょに鑑賞。
刀剣乱舞は前にもアニメになったのを観たことがあるが、前のほのぼのしたのと違って今回はアクション満載。さすが「活劇」。
時間をさかのぼって歴史を変えようとする悪い奴らを人間になった日本刀が時間を越えてやっつけるって話だよ。
え?
どこかひっかかった?
え?
「人間になった日本刀」のとこ?
そうだよね。おかしいよね、それ。
そこは僕にもよくわかんないんだ。なんで日本刀が人間になっちゃうのかは。
でもアニメはアクションが多くて化け物も出てきてなんやらかんやら面白そうだから続けて観ることにしたよ。日本刀が人間になっちゃう謎もいつか解けるかもね解けないかもね。楽しみだね。