第7話まで絶賛していた『スタートレック:ピカード』ですが( →老いて弱くなり賢くなる。SFドラマ『スタートレック:ピカード』“STAR TREK:PICARD”「7.ネペンテ」を観たら)。
ですがですが。
エピソード8〜10まで観終わって思ったのは、
「シーズン2が配信されたら必ず観るけどこれで終ってもいいや」
でした。
ちょっと冷めてる。
物語として完結しているとかではなくて、私がこのドラマの良いところとして感じていたのが、ほとんど「旧シリーズの登場人物たちが旧シリーズで獲得していた価値をわかりやすく理想的な形でもう一度見せてくれた」だったな、ということにあらためて気づいてしまったからなんですね。
これをもう10 話やられてもなぁ、というのが正直なところです(いや、結局喜んで観ちゃうんだろうけどさ)。
そんななので、過去シリーズのキャラクターの良さにばかり目が行って、このシリーズからのキャラクターに愛着を持つまでには至りませんでした。新キャラたちそれぞれに陰影がつけられていますが、なんか人工的に見えちゃうんですよね。最強戦士エルノアは設定が極端なだけにむしろそれが気にならない。あの「天然」扱いも含めてこのドラマには必要だったと思います。
ただ、今までのスタートレックシリーズはシーズンが進むごとにキャラクターに馴染んで、面白くなっていくものが多かったので、そこに期待しましょう。
前回の感想までは絶賛していた私が否定的になっているのは、本当のところシーズン最終話「10.理想郷(後編)」が、どうにも都合の良いことばかり起こって事件が解決しちゃったからなんですね。
迫るロミュラン大艦隊、そして有機生命体を絶滅させる力を持った人工生命の連合体(これがまたよくわかんない存在)の召喚。
それが全部解決します。偶然や思いつきや説得や相手の間抜けさや翻心によって。
私はちょっと呆気に取られちゃいました。
大きな事件が解決した後のある場面で、ひょっとしてこれ夢オチか?と思っちゃったくらい都合よく事が運んでました。
むしろ夢オチの方が良かったくらい。そこにSF的アイデアがあれば。
大きな「生命」問題が解決したあと個別の「命」の話、つまり「人生」の話になります。ピカードとデータの会話という形で。
ここは良かったと思います。ここにシーズン1通してのテーマが集約してもいます。
ずっとこのトーンでもいいのにな、と思いましたがそれじゃ10話持たないし、なによりジジ臭いにも程があるドラマになっちゃいますしね。それなりの事件と絡めないとね。
このドラマ、どうも既視感を感じながら観ていたのですが、私がこの前読み終ったダン・シモンズの『エンディミオン』にちょと似てるような気がしました。
ひとりの少女が「救世主」あるいは「究極の破壊者」として、ある勢力からは守られ、ある勢力からは追われ、命を狙われる。命を狙う側の勢力はかつて自律した人工知能と闘い、それを封じた世界を構築している。自律した人工知能は部分的に生きていて、少女の行動を助ける。
大艦隊に包囲されるシーンもありました。そこから逃れる方法も割とあっけなかったりして、妙にこのドラマと共通しているように思えます。(『エンディミオン』感想こちら →長いけど幸せに面白いSF小説。ダン・シモンズ『エンディミオン』を読んだら)
あともうひとつだけ。
吹き替え版で鑑賞していたのですが。
いつものキャラがいつもの声なのは泣きたいくらいありがたく、各方面に感謝するとして。
新キャラのラフィの吹き替えだけは耳障りに感じました。特に後半。
声質もちょっとアレなんですが、なんだろうあのトロトロ甘ったるい喋り方(特に後半そうなって行った)。
場末のスナックで年増のおねえさんが「ボトル入れよぉ〜ん」と甘ったれた声で言いながらしなだれかかってきた時の感触を思い出してしまいます。おねえさんはニューボトルのキャップを開けられませんでした。「よく見えない〜ん」と言いながら両腕を目一杯伸ばしてキャップを見ていました。ひどい老眼だったからです。その首はベテラン夫婦漫才師の奥さんのようにくっきりと筋が浮いていました。
ラフィの声。
元がそうなのかと字幕版で聴いてみましたがそんなことないように思えました(英語なので自信ありませんが)。
演出なのか声優さんの役作りかわかりませんが、失敗してると思います。
そのあとその年増のおねえさんと無理やりチークを踊らされて死にたくなった私が言うんだから間違いありません。
もう30年以上過去の出来事です。
はい。
すいません。
まったく私の事情です。声優さんも演出さんも悪くありません。すべてはあの女、メグミのせいであります。
というわけで『スタートレック:ピカード』、シーズン2、配信が楽しみですね!
手洗いうがいを励行してそれまで生き延びようぜ!(←マジ)
コメント
ほぼ同意見です、Ep8あたりから強引な展開が目につき、ちょっとまずいと思い始め、Ep10でその思いがMaxになりましたが、最後の30分で少し救われました。
でも、こんな形で生き返らすくらいなら、ここでストーリーを閉じるべきかなあと。
あかよろしさん>コメントありがとうございます。
都合の良いところに都合の良い奴が現れすぎでしたよね。ライカーは引退して夫婦でピカードの精神的支えになるか、艦隊で力があって実務的な助けをするかどちらかにすべきだったと思います。両方はズルい。
テレビドラマとして積み重ねてきたものを結末だけ映画的な端折り方でまとめちゃったような気印象でした。