こんなベイビーはイヤだ。映画『オテサーネク』“Otesánek”を観たら

アマプラで偶然見つけて鑑賞しました。チェコ・イギリスの合作映画で、劇中言語はチェコ語。チェコの民話「オテサーネク」を下敷きにした現代劇だそうです。
ダークファンタジーとジャンル分けされていましたが、これがなかなか手強い映画でした。

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赤ちゃんが欲しいのですがなかなか恵まれない夫婦。特に妻はノイローゼのような状態でした。
そんな淋しさを紛らすために買った別荘の庭で夫が人型に見えなくもない形をした切り株を掘り出し、形を少し整えてから「ほら赤ちゃんみたいだろ?」と妻に渡します。
もうこの感覚に大きな「?」が浮かびます。
切り株は赤ちゃんに見えないし、赤ちゃんが欲しい妻にそうやって渡すのもどうかしてると思います。
妻が怒り出すかと思っていたらびっくりするくらいの大喜び。
たちまち「私の赤ちゃん」になってしまいました。

切り株ベイビーを溺愛する妻に夫はドン引き、「やめろよお前それ切り株じゃん」とか言いますが妻にとってはすっかり生きた赤ちゃんなのでした。
実際妻の目には切り株が赤ちゃんのような声で泣いて動いているように見えています。産着とかオムツとか着せたりしてます。

ノイローゼ妻の妄想か?
『パンズ・ラビリンス』みたいに虚構と現実が判然としないパターンか?
と思ったら全然そうではなく、やがて夫も切り株が生きていることを認識し、我が子として扱い始めます。職場の同僚にも子供ができたことを伝え、オチークと名前も付けちゃいます。男の子だそうです。

こうして夫婦は育児を始めますが、オチークは並々ならぬ食欲を見せ、ついには…という展開になってゆきます。
コメディっぽい雰囲気なんですが、それで通しているわけではなく、なんすか全体「ブラック」です。
食べ物や食事シーンが本当に不味そうに描かれていて、最初はこれがチェコ風料理なのかな?と思いましたが、やがて明らかに意図的だとわかってきます。しつこいんだもん。
ちょっと不快で「なんだよこれ」と思っていたらヤン・シュヴァンクマイエル監督っていつもこうなんですって。

食欲は無くなるわ、児童虐待っぽいシーンはあるわでなかなか人におすすめしにくいところではありますが、クレイアニメで撮影されたオチークはなかなか面白かったですよ。動きとか。どんどん大きくなるし。でも声は赤ん坊のままなのでとっても不気味。
モンスター映画好きには喜ばれますね。それだけじゃない要素がいっぱいありますけど。

結末は「え?これで終わりななの?」という感じでしたが、ちょっと変わった映画を観たい人にもお薦めです。
アマプラの配信はもうすぐ終了するみたいなので興味のある方はお早めに

チェコ民話部分の絵本もありました。著者が監督の奥さんだそうですが。劇中簡易アニメで民話部分が出てきますが、この本の絵でしたね。

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