タイトルに「愛と哀しみ」とか付いてる時点でなんだか自分とは関係ないお話だと思っていたあのころ(公開が1981年だから19歳)。
バレエ映画だと思って「やっぱり関係ないや」と思い込んでいた19歳。
ずっと観ないで生きてきましたがとうとう鑑賞176分(NHK BSでの放送時間。しかしこの上映時間はちょっといわく付き)。
1930年代、ソ連、フランス、ドイツ、アメリカで音楽を通じて知り合った四組の男女から始まる、モデルはいるけど実話じゃない物語。
冒頭ナレーションで「人間は同じこと繰り返してる」みたいなことが語られます。
四組のカップルは幸せに結ばれます。「愛と哀しみ」の「愛」ですね。
でもすぐ「哀しみ」がやってきます。戦争です。
四つの国でそれぞれですが、あちこちでいろいろ哀しく切ないことが起こります。
音楽家が仕事を失い、嘆きながらも仕事を探すシーンがあり、現在の、感染症で仕事を無くしている人がいることを思い起こします。
暗い時代でもみな、たくましく生きようとしていますが、世界戦争の影響は広がるばかりで、もっと大きな不幸に襲われ、家族と離れ離れになる者もいます。
影響は戦後も残り、ドイツ人の指揮者はアメリカで無観客演奏をする羽目になります。(モデルであるカラヤンに起きた実話だそうです)。
アメリカ勢は世界大戦の悲劇は少なめでしたが、時代が下るとじわじわ「病み」に冒されます。
各国の四家族(とその周辺の人々)がそれぞれ生きて子供の代まで繋がっていく複雑な物語で、さらに同じ俳優が親と子を演じてたりして、油断してると「こいつ誰だっけ?」になります。
でもそんなふうにポケーっと観ていた私でもクライマックスは「こりゃすげぇ。こりゃ本当にすげぇ」と感動しました。
「ラスト15分」と呼ばれているようなので15分くらいあるんでしょう。戸惑いながらも長時間観てきたものがこの15分で、心の中で結ばれました。クロード・ルルーシュ監督は自信を持って観客に委ねたのでしょう。
人生はままならない。だからこそ音楽であれバレエであれ人は完全にコントロールされたものに惹かれるのでしょう。
音楽にもバレエにも全く疎い私ですがそう思いました。
スポーツ鑑賞も人体がコントロールされているのを見る快感があるのかな、と思います。私が疎いジャンルばかりですが。
エンドロールは打って変わって軽い音楽が流れ、画面はパリの街の空撮。
凱旋門の周りを車が流れ、エッファル塔をかすめるようにヘリが飛ぶ。
いろいろあっても人生は続くのだ。
いろいろあってもとりあえず生きようという気持ちになる傑作でした。
と。
感動したのでこの映画についてちょっと調べたのですが、あちこちで上映時間が184分とか185分と記されていました。
あれ?録画したものは放送時間が3時間弱。
おかしいな?
数字に弱い私は何度も計算しました。
1時間が60分だから3時間で180分。184分だと3時間以上だから映画本編以外も含めた録画時間2時間57分だと177分で1時間は60分だから2時間と57分だから57分は1時間に足りないから今観たのは8分くらい短い。
1分は秒単位を繰り上げるか下げるかの誤差の範囲だけど8分は長い。
何か日本で放送できないシーンでもあってカットしたのかと思い、さらに調べたらそうではないということがわかりました。
なんと4%早回しの放送だったそうです。
音楽映画でそれはアリなのか?とも思いますが、不自然さとかは全く感じませんでした。わかる人にはわかるのかなぁ。
『愛と哀しみのボレロ』には、4時間20分の「完全版」というのもあって、これはフランスでテレビ放送されたものだそうです。
上映時間だけじゃなくて、画面もテレビ画面に合わせた比率になっていて、それも左右をトリミングするのではなく、天地に伸びているそうです。
つまり映画版に映っていないものが上下に映っているそうです。ちょっとびっくり。
その辺りの事情を研究、解説しているサイトがありました。→悠悠炊事『映画「愛と哀しみのボレロ」の研究』
感動して観終わったのになんか釈然としない気持ちになりましたが、この映画、ソフトも中古でしか手に入らないようなので、録画は保存しておくことにします。