澤村伊智短編集『などらきの首』を読んだら

長編は『ぼぎわんが、来る』、『ずうのめ人形』の2作を読んだ澤村伊智の短編集。
6編収録ですが、面白いのもそうでもないのも普通のもありました。

などらきの首 比嘉姉妹シリーズ

「比嘉姉妹シリーズ 」となっていますが、そうじゃないのもありました。正確には「比嘉姉妹他関わってくる人たちシリーズ」でしょうか。
なので、長編を読んでいる人は「ああこの人、」という人が出て来て、面白さちょいプラスです。「この事件で出会ったのかこの人とこの人」というお楽しみがあります。
逆に長編での比嘉姉妹の関係性みたいのを知らないと「?」なセリフとか、無駄に思える場面もあると思います。

収録6編の中では、
「学校は死の匂い」と「居酒屋脳髄談義」が面白かったです。

「学校は死の匂い」は、自分の子供の運動会を見にいった時に感じた「組体操」終了後の「感動」演出(ハイタッチする担当教師と児童たち、そして涙ぐむ担当教師)の気持ち悪さを思い出しながら読んでいました。
「明るく元気でポジティブ」が成立するために何を犠牲にしているのか?「陰気でネガティブ」上等で生きてきた私には共感しかありませんでした。

「居酒屋脳髄談義」では、「男」が当たり前だと思っていることがいかに脆くていいかげんで根拠なんかありゃしないということを思い知らされます。ホラー的なものよりも、自分の今までの言動は大丈夫だったろうかと怖くなってしまいます。

この2作を読むと、他人の立場を思いやって、人に優しく生きていかなければいけないな、という気持ちになります。
昔の怪談とか、人にひどいことすると自分もひどい目に合うよだからしちゃダメ、みたいなお話が正統派だったりするので、この2作は正統派怪談と言えるのかもしれません。

他の4作は表題作の「などらきの首」も含めてなんか凡作でしたねぇ。長編に出てくるキャラクターを補完する程度のものでしかなかったように思いました。

『ぼぎわんが、来る』感想 →いろんな意味で怖いホラー小説『ぼぎわんが、来る』を読んだら

『ずうのめ人形』感想 → 腹立たしいくらい(怖いっていうより)面白い(でも怖い)『ずうのめ人形』澤村伊智 著 を読んだら

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