妙に早起きしてしまった休日の朝。
せっかくだから映画でも観ようかとAmazonプライムビデオを探っていて見つけました。
1870年、ナポレオン3世が不慮の事故で死亡、そのため普仏戦争が起こらず、歴史が大きく変わったフランス(と世界)。1941年はナポレオン5世がフランスを支配していました。
一方その70年の間に世界中の優秀な科学者が次々と失踪、おかげで科学の発展は滞り、電気も石油も無い街は蒸気機関を頼りにしていました。
って紹介文。
これは面白そう。歴史とかよくわかんないけど面白そうということだけはわかる。
ということで鑑賞開始。
「字幕版」で観ようとしましたが、文字が邪魔に感じたので「吹替版」にしました。
1870年ナポレオン3世から兵士を不死身にする血清の開発を命じられた若き科学者ギュスターヴ。ある日ナポレオン3世直々に進捗状況の視察にやってきます。
ギュスターヴの研究室には「ナポレオン3世カレンダー」が貼ってあり、視察の日、7月18日に「N」と書き込んであります。
研究室には傷ついた実験動物、べっとりと血の付いた金属製のベッド(拘束具付き)などが見られ、不気味な雰囲気です。
「ギュスターヴ、血清はできたか?」
皇帝は問います。
ギュスターブは、求められている血清はまだできないが、その過程で予想外の効果が出ました、と答え、それをナポレオン3世に披露します。
「ロドリグ、シモーヌ」
暗い実験槽をノックするギュスターヴ。
暗い中に二つの目が現れ、
「こんばんは、陛下」
暗くて目しか見えませんが、実験動物がしゃべったのです。
「私をナメるな」と怒りだす皇帝。戦争のことしか頭に無いのでしゃべる動物なんか化け物扱いです。「不死身」もかなり化け物だと思いますが。
とにかく不死身か試せと、同行していた元帥に銃で撃てと命じます。
研究所で銃を乱射したおかげで混ぜるな危険薬品が混ざってしまい大爆発。どさくさでしゃべる実験動物ロドリグとシモーヌは逃亡しますが、ナポレオン3世と元帥、ギュスターヴの三人は死んでしまいます。
この事件が全ての発端となります。
この事件で世界がどうなっていったかの説明があり、世界中で有能な科学者が失踪する事件が頻発したことも伝えられます。ノーベルやパスツール、アインシュタインも失踪し、科学は停滞します。
蒸気機関だけが頼りでしたが、燃料の石炭が枯渇、木炭での代用が始まり、森林資源の争奪で戦争が起こります。
軍が力を持ち、失踪を免れた科学者たちも強制的に軍の武器開発に徴用されます。警察には、身を隠した科学者を見つけ出し逮捕する専門の部署まであります。科学暗黒時代です。
ここまで映画開始から約7分。
現実と違う世界を解説するお手本みたいな手際良さ。惚れ惚れしちゃいます。
そしてここでタイトルが表示。
Avril et Le Monde Truqué
時代は1931年まで下ります。
ここで主人公のアヴリルが初登場。
アヴリルはギュスターヴの孫ポールの娘。ギュスターヴのひ孫ってことですね。
Avrilはフランス語で4月って意味だそうです。
10歳くらいかなぁ、アヴリル。
相棒のしゃべる猫ダーウィンも登場。キャラがわかりやすいように憎まれ口ばかり叩いてます。
街はいい感じに荒廃していて、木炭自動車がガタガタ走ってます。なぜかエッフェル塔が2本立っているのが遠くに見えます。
ここから少女と猫の血湧き肉躍る大冒険、になるのかと思いきやそうはならず、アヴリルとダーウィンが追い詰められ逃亡するシーンで終わり、1942年まで跳び、その間の世界情勢の解説が入ります。アメリカとフランスは戦争状態、パリとベルリンを結ぶロープウェイの修理が完了した、などということがメディアの情報として伝えられます。
大人になったアヴリルがあまり恵まれていないことがわかるシーンが続きます。
ここで約20分。映画全体で1時間45分なので、あと1時間25分くらい。ここからが本題、でしょうか。
大人になったアヴリルとダーウィンの冒険がこの映画のメインだったのです。
街の様子やらそこで動く機械やらその仕組みがなんとなくわかる描写やらとっても素敵。ケーブル歯車たなびく蒸気。
それホントに蒸気機関で動いてるの?というものもありますが、ガッチャンコガッチャンコプシューってなると、ま、そうなんだろな、と納得しちゃいます。
街や機械装置のデザインや仕組みが魅力たっぷりなのに対して、人間のキャラクターデザインはちょっとそっけなく思えました。
萌え絵とかちょっと苦手な私ですが、もう少し色気があってもいいんじゃないかと思いました。黒目とか胡麻粒みたいです。バンド・デシネっぽいといえばバンド・デシネっぽいのかな。
デザインはそっけないですが、物語に沿った演技をしていて安心して観ていられます。
後半アヴリルが、胸元の大きく開いた服に着替えた時の仕草もよかったです。エロいというのではないけど、なまめかしい感じでちょっと落ち着かない気分になりました。
暗い世界での冒険譚ですが、楽しい場面も豊富で、教訓はあるけど説教臭くはない。そして恋愛要素もちゃんと(?)あります。恋愛どころか人間関係を避けて生きてきたアヴリルが恋愛感情を戸惑いながらゆっくりゆっくり自覚していく展開はかわいかったです。
そっけないキャラクターデザインに惹かれない人もいそうですが、それで敬遠して観ないのはもったいないと思います。面白いですよ。