お楽しみシリーズ「特捜部Q」。現時点(2023年3月)での最新刊である第8作、『特捜部Q―アサドの祈り―』までたどり着きました。
作中では「特捜部Q」創設から十数年経ってます。1作目の『檻の中の女』の本国での発行が2007年、この『アサドの祈り』が2019年ということなので、実時間とほぼ同じなのでしょう。
そういえば作中のネット環境なども発達しているようで、冒頭でカールとアサドにGPS内蔵腕時計が支給されたりします。
特捜部Q―アサドの祈り― 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫) Kindle版
キプロスの海岸に、難民の遺体が流れ着きます。37人。
これで今年になってから地中海で命を落とした難民は2117人になったとテレビのレポーターが報じます。
37人の中に一人の老婆が居て、偶然居合わせたカメラマンジャーナリストが写真に撮り、「犠牲者2117」としてマスコミに公表します。
写真は各国で公表され、多くの人が目にします。
しかし、「犠牲者2117」の写真に世界一ショックを受けたのは特捜部Qの謎男アサドでした。
という発端。
原題の‟Offer2117”はこの数字なんですね。‟Offer”はデンマーク語で被害者とか犠牲者という意味だそうです。
あまりのショックに仕事ができなくなるアサド。
しかしもっとショックなことが判明して、特捜部Qが「犠牲者2117」に関わっていくことになります。
この事態に、前作でズタボロになって退職していたローセも復帰することになります、でも休んでいる間に20キロも体重が増えてしまったそうです。アサドの危機に立ち上がる傷だらけのローセ。ちょっと泣けます。
第1作目から謎の多いアサドでしたが、今回数々の謎が明らかになります、もう嫌って言うほど明らかになります。むしろ明らかになり過ぎかもしれません。
前作ではズタボロになりながらローセの秘密が明らかになり、今回はアサドです。ズタボロにも程があるアサド。
「犠牲者2117」の写真がらみでもうひとつ別の事件も進行していて、特捜部Qは分裂します。そこへカール・マークの私生活の問題も降りかかって、と終盤ゴタゴタガサガサしながらも盛り上がっていきます。シリーズ最高のスケールとややこしさと涙のクライマックス。
というわけで、アサドの謎が全て解けたので続刊ではそもそもの、というか始まりのというか未解決のままの「釘打ち機殺人事件」の謎が解き明かされていくのでしょう。
全10作の予定というのをどこかで見かけたので、2巻かけて大団円を迎えるのでしょうか?
でも解決してもみんなズタボロかもしれません。特捜部Qったらずっとそうだもん。